20-21 選手採点
- おしょう
- 2021年7月31日
- 読了時間: 13分
更新日:2021年7月31日
パウ・ロペス【6.0】
ミランテや昨シーズンの彼自身よりもパス成功数が多く、成功率も高い。さらに失敗数はセリエAのGKで屈指の少なさだった。それでも「パスミスの多い選手」という悪評がつきまとうのは、ミスパスの多くが相手選手に直接的に渡るもので、たびたびピンチを招いたためだろう。ただし、敵チームのハイプレスに苦しんだ選手の一人というイメージが強い一方で、素晴らしいシュートストップがチームを救うことも少なくなく、従来GKとして最重要視されるタスクはこなした。ペナルティエリア内でもゴールエリア内でも、近距離のシュートストップはリーグ屈指の数となっており、そのうえセーブ率は昨季と比べて約15%も高い。それでも失点が多いのは、ローマの被枠内シュート数が非常に多いためか。
アントニオ・ミランテ【5.5】
今季も第2GKとしてある程度の貢献を果たしたが、これといって褒めるべき点はないだろう。パウ・ロペスと比較すれば悪目立ちするシーンは少なかったものの、正守護神の座を奪えるほどの能力が備わっていると感じさせるほど、パーフェクトだったわけではない。スタッツをみても、パウ・ロペスを上回るのはロングパス成功数の項目くらいだが、そもそものロングパス数が多いので当然ともいえるし、なるべく後方から組み立てたいローマの狙いに沿ったプレイではない。それでもパスミスになるよりはマシと考えれば、適切な判断力の持ち主ともいえるだろうか。控えGKであることを前提として評価するならば、それなりに頼りになる選手と表現してもいいかもしれない。
リック・カルスドルプ【6.5】
少なくとも過去10年のローマにおいて、リーグ戦単季では2番目にアシスト数が多いサイドバックとなった(6アシスト)。精力的なランニングでチャンスシーンに顔を出し、シンプルかつ積極的なプレイで決定機を演出。アシストはすべて低弾道のクロスボールであり、再現性の高い得意なパターンとして確立した点が大きい。また、好不調の波が比較的小さいうえに離脱が少なく、弱点になりかねなかった右サイドを支え続け、チームのバランスをとろうと努めたことは高く評価されるべき。アシスト数以外ではこれといった長所を数字で示していないが、ネガティブな空気が漂いがちだったローマの中でも彼が非難の的になることは滅多になかった。開幕当初の期待値を最も大きく上回った選手だ。
レオナルド・スピナッツォーラ【6.5】
彼自身が戦術の一つといっても過言でないくらいに強く影響を及ぼす存在で、彼がいるといないとではローマの戦い方が変わってしまうほどだった。高いポジションを維持することが許され(求められ)、個人突破を常に選択肢の上位に置いて相手選手を引き寄せた。進行方向が左右どちらの可能性も考えられるボールの持ち方と素晴らしい走力で敵陣を切り崩し、セリエAのサイドバック(ウイングバック)ではドリブル成功数が最多のプレイヤーとなった。さらに、「攻撃的だから守備がもろい」といった悪い印象もさほどなく、むしろ有事にはCBを任された。キーマンであるがゆえに短い負傷離脱がやや多かったことは余計に残念で、唯一のネックになる要素だった。
ブルーノ・ペレス【5.5】
地上での対人戦勝率、インターセプト数、ブロック数、タックル数でスピナッツォーラとカルスドルプを上回るなど、守備面では大きな穴にはならなかった。問題だったのはアタック時の貢献度が低いことで、これといった意図のなさそうな「ドリブルを仕掛けるフリ」が多くの場面でテンポを乱す要因になったことは否めない。また、ウイングバックの選手では最もバックパスの本数が多く(前方向のパスは少ない)、昨季にも同じようなデータが残ったことを考えるとアイディアとビジョンの不足は明白だ。かつてはそれでも身体的なスピードで解決するシーンもあったが、その姿はあまり見られなくなった。一方で、プレイの質はさておき左サイドでの起用にもなんとか対応したこと、怪我がほぼ皆無だったことが、チームの助けになっていた。
ジャンルカ・マンチーニ【6.5】
ローマ守備陣の中ではケチをつける要素が最も少ない選手といえそうだ。センターバックに求められる技能をバランスよく備えており、ピンチに直結するミスを犯すことも低頻度。敵陣でのパス本数やロングパス成功率では、今季センターバックでプレイした本職中盤のクリスタンテに近い数値となり、さらに積極的な攻撃参加も良いアクセントになった。5ゴール・2アシストというセンターバックらしからぬ好成績も残している。一方で、カードが多すぎる悪癖は昨季から改善がなく、昨季最終戦のレッドカードによる今季の処分を含めれば、出場停止で欠場した試合数は6。ELでは決勝ラウンドだけで3つの警告を受け、準決勝の1stレグで試合に出られず、チームは大量の失点を浴びた。
ロジェール・イバニェス【6.5】
昨季終盤の活躍を経て、センターバックの主力に定着。守備面のスタッツでは軒並み優秀な数字を記録しており、タックル数、空中戦勝利数、地上戦勝利数、インターセプト数でローマ内のトップ(最初の2項目はセリエAでも上位)に立つ。さらに、最終ラインでのボールの預けどころの一つであり、ショートパス成功数でもクリスタンテを含めた他ディフェンダーを上回った。ときおりドリブルで相手の守備者(主にフォワード)をかわすなど、マンチーニとは別の形で幅広い活躍をみせている。守備時の処理を誤ってピンチを招くシーンは一時期散見されたものの、全体的にはおおむね悪くないシーズンを送った。3年目のさらなる飛躍に期待がかかる。
クリス・スモーリング【5.0】
パフォーマンスの質は一定の水準を保ったが、半分以上の試合では出場できるコンディションになく、プレイ時間は全体の30%にも満たない。12~1月には53日間で11試合連続出場という過密スケジュールで戦った時期もあったが、まったく負傷していない月が一度もない有り様だった。プレイできる状況にあれば長所のフィジカル面を活かした守備は健在。空中戦でも地上戦でもデュエル勝率はローマのセンターバックの中では最も優秀で、ドリブルで抜かれる少なさ、ブロック数ではリーグ屈指だ。ほんの数試合に出ただけの若手を除き、試合に出た際の平均獲得勝ち点が最も多かったのはスモーリングであり、彼の頻繁な戦線離脱は明らかに大きな痛手だった。
マラシュ・クンブラ【5.0】
秀でた要素のない凡庸なシーズンを過ごした。昨季のエラス・ヴェローナでは主力選手として活躍の場を与えられたが、ローマでは序列の低さに加えて故障も頻発したため、出場機会が限定的だった。シーズンの序盤には無難に戦えていたが、さほど難しくもない局面で相手選手に突破を許すようなことが徐々に増え、データ上でもドリブルで抜かれた頻度は高い。リーグ戦で10回以上先発したセンターバック(クンブラ自身を入れて5人)と比較した場合、インターセプト数、シュートブロック数、パス数は最下位、エアバトル勝利数とタックル数でもクリスタンテに次いで2番目に少なく、今季は良さを発揮することができたとはいえない。しかし、この21歳に失格の烙印を押すには時期尚早だろう。
ブライアン・クリスタンテ【6.0】
昨季もセンターバックで起用されたことはあったが、今季はその機会が増えて中盤との両立を強いられた。ディフェンダーとしては守備面で特筆するようなスタッツがないものの、タッチ数やロングパスの精度を考慮すれば、この起用法に意味があったと断定できる。論点はMFとしてのプレイ機会を犠牲にするほどの価値があるのかという点だが、負傷者続出の状況ではチームに選択肢が少なく、適性などを配慮する余裕はなかった。MFとしてはオールラウンドだが、どちらかといえばタッチ数、ドリブル成功数、キーパス数といった、相手守備陣を崩したり、フィニッシュに絡んだりする攻撃面での長所の方が明確だった。また、今季の2得点はオープンプレイで生まれたもの。やはり最終ラインに組み込むのは得策ではないか。
ゴンサロ・ビジャール【6.0】
序盤は出番が限られたが、出場時の高質なプレイで評価を高めて一時は完全なレギュラーに定着。しかし、最終盤になると再び序列を下げるなど、完璧なシーズンだったわけではない。ボールタッチやパス、ドリブル、タックル、空中戦はいずれも同ポジションの他選手と比べて試行回数が多いゆえに、個人的なエラーがやや目につきやすい側面はあった。とはいえ、彼のプレイスタイルは今のローマには異質であり、確実に存在価値のある選手。とくにピッチ中央でのドリブルに関してはセントラルMFとしてリーグ屈指の成功数を誇り、パスの経由地点でありながら数的優位をつくる役割も上手にこなしていた。また、自陣と敵陣の両方で多くのプレイに関与しており、これもヴェレトゥやディアワラとの相違点として挙げられる。
ジョルダン・ヴェレトゥ【6.5】
彼もまたハードなスケジュールの影響で疲労を抱えながらシーズンを送ることになった選手の一人であり、とくにシーズン終盤は欠場する試合も少なくなかった。それでも、出場できるコンディションにあれば大抵は先発メンバーに名を連ね、17試合を欠場したにもかかわらず出場時間は全体の8番目となった。さらにはPKキッカーとしても優秀で6回すべてを成功させており、オープンプレイでも5得点をゲットして得点能力の高さを発揮。キックの上手さはロングパスにも活かされ、成功数・成功率ともに高かった。また、ビジャールやディアワラと大きく異なる要素としては、割合として前方へのパスが多いことも挙げられる。この3選手の中では自陣よりも敵陣でのパス頻度が高い点も唯一であり、プレイエリアの違いが際立った。
アマドゥ・ディアワラ【5.5】
低い位置でパス交換の中心になりながら守備時の対応に備える点は相変わらずで、優れた安定感でチームに落ち着きをもたらした。パス成功数とインターセプト数にもその特性は表れており、いずれもリーグのセントラルMFの中で10番目くらいの数字を残している(極端に出場が少ない選手を除く)。さらに、ポジションを上げた攻撃参加も積極的とまではいわずとも、90分あたりのシュート数は昨季の約2倍に達していて、第25節のフィオレンティーナ戦では試合終了間際の得点でチームに勝ち点3をもたらした。しかし、欠場数は昨シーズンに続いて比較的多く、シーズンを通しての継続性はない。リーグ戦での先発出場数は7回にとどまり、ベンチに座り続けた試合や欠場した試合の方が多い。これでは高く評価するにも限界があるというものだ。
ロレンツォ・ペッレグリーニ【7.0】
11アシストを記録した19-20シーズンを経て、起用ポジションの最適解は攻撃的MFの中央であるという答えが出たように思われたが、チーム事情もあって2列目と3列目の兼任をしなければならない状態に陥った。しかし、その状況下でも11ゴール・9アシストと素晴らしい数字を叩き出し、負傷による戦線離脱が3試合だけだったことも今季のローマにとっては大きな助けとなった。11ゴールはキャリアハイ、負傷欠場数も過去最少タイだ。特性としてはゲームメイカーというよりはチャンスメイカーであり、セントラルMFでの出場時にはタッチ数が比較的少なく、一方でキーパス数は起用法にかかわらずリーグで4~5番目に多い。守備面での目立ったスタッツは、3列目の選手として4番目だったインターセプト数だ(90分平均で2.3回/出場数が全体の25%未満の選手を除く)。
ヘンリク・ムヒタリアン【7.5】
特筆するほどはポゼッションの上手さがあったわけでないローマにとって、カウンターアタックが得点機を生み出すためには重要なポイントの一つだが、その中心にいたのがムヒタリアンだった。積極性と正確性を同時に発揮することができ、フィニッシュに関与する頻度と精度が非常に高い。シュート数と枠内シュート数はセリエAの攻撃的MFの中で最も多く、15得点・11アシストという素晴らしい結果も出した。疲労と負傷で約3ヶ月も得点に絡めない停滞期があったとは思えない。さらに、守備面での頑張りを感じさせるシーンも少なくなく、セリエAの同ポジションではタックル数がナインゴランに次ぐ二番目、インターセプト数は最多となった。
ペドロ・ロドリゲス【5.5】
6ゴール・4アシストという数字は最悪とはいえないが、そのうち4ゴール・1アシストは最初の50日間で記録したもの。裏を返せば、それからシーズン終了までの約200日間では2ゴール・3アシストにとどまり、スタートが良かっただけに物足りなさを感じさせる日々が続いた。スタッツでも目立った部分はなく、ドリブルやチャンスメイク、シュートに加え、守備面で比べてみても、ムヒタリアンとペッレグリーニ(2列目での出場時)の両者に勝る要素は皆無といっていい。とはいえ繊細なテクニックを発揮するシーンは要所でみられ、シーズン序盤は定位置を確保していた。転機となったのは筋肉系の痛みで立て続けに2回チームを離れた1月で、チーム内での重要度を落としていった。
カルレス・ペレス【5.0】
セリエA・第4節のベネヴェント戦で、メッシを想起させる(ロマニスタにとってはウンデルを思い出すような)スペシャルな一撃を炸裂させたが、このシーズンにおける彼のピークはそのときだった。バルセロナの先輩にあたるペドロと比べると得点数とアシスト数はちょうど半分だが、出場時間は彼の半分よりは長い。量でも質でも劣る結果になったといえるうえに、シーズンの半分だけで2得点・3アシストを残した昨季の自身にも数字上では上回っていない。トレーニングで監督を納得させられなかったといえばそれまでだが、ELのグループステージと、ポジション上のライバルたちが相次いで負傷した4月頃を除き、試合終盤に少し出場するだけの状況が常でありアピールが難しかったという点には、同情の余地があるだろうか。
ステファン・エル・シャーラウィ【5.0】
1年半ぶりに帰ってきたが、かつての姿はそこにない。5年前の加入時には半年間で8ゴール・2アシストの活躍をみせたが、今回はわずかに2ゴール・1アシストでシーズンを終えた。シャフタール戦での得点は最高だったものの、それ以外にこれといった見せ場はなし。もともと個人スタッツに特長が表れるタイプの選手ではなく、そこにゴール数を上乗せできないようでは不足感が生じてしまう。ペナルティエリア内でのシュート数は例年チームの攻撃的MFで最多、またはそれに近い数字になるのだが、今回は15-16の加入以降で最少になっており、レギュラー陣よりも少なかった。自身だけの問題ではないにせよ、長所を活かせない苦しみの中で戦っており、存在感の薄い時間帯が長かった印象だ。
ボルハ・マジョラル【6.5】
ジェコ以外のストライカーがフィットできない時期が長く続いたローマだが、マジョラルがその流れを断ち切った。17得点と5アシストという記録だけでも近年のローマには満足のいくもので、出場時間がそれほど多くはない中で105分に1回のペースで得点に直接絡める効率の良さは抜群だった。強豪相手に得点できていないことは難点だが、そもそもそのような試合では先発出場できていなかったため、それを「得点力不足」と表現してしまっては安直すぎるだろう。つまり、点取り屋としての役割は担ったが、絶対的な主力になるためにはプラスアルファの技術が身につける必要があるということだろう。資金面の事情もあるだろうが買取オプションはまだ行使されておらず、新シーズンでは2年目のテストに挑む。見据えるのはエースの座。
エディン・ジェコ【5.5】
キャプテン剥奪の一件を抜きにして、プレイの質で判断しても物足りない。ELでの6得点によって多少は悪い印象が薄れているかもしれないが、リーグ戦においては第16節以降で一度も得点できず、ローマでの過去最少となる7得点に終わった。いつもと違って比較対象となるライバル(マジョラル)がおり、得点に絡むペースが彼の70%程度である点も無視できない。ポストプレイも随所で効果大だったが安定性はそれほど良いものではなく、ローマでエースの座に君臨するジェコの時代が終わりに近づいていることを予感させた。ただし、褒めるべき点がまったくないわけではなく、マンチェスター・ユナイテッドをはじめとする難敵に対しては、マジョラルよりも相手選手を苦しめる存在だったように思われる。
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