22-23 選手採点
- おしょう
- 2023年6月16日
- 読了時間: 14分
ルイ・パトリシオ
【出場:51】【失点:46】
おおむね昨季並みの調子を維持したようにも見えたが、最後の砦として決定的な選手であったとは断言できない。セリエAでの出場試合におけるチームの被得点期待値(失点期待値)が27.6であったのに対して実失点数は35と、20チームの正GKのうち、期待値との乖離はワースト2位。さらに、ローマは被シュートの半数以上がエリア外から放たれたものであるという点で、欧州5大リーグでは唯一の存在であり、シュートストップの平均難易度は高くなかったはずだ。また、モウリーニョが許容しているならば大きな問題ではないが、後方でのパス回しを諦める一因にもなっている。
【6.0】
5.5点寄り。さほど悪い印象はないが、例えばオルセンやパウ・ロペスでは再現困難だろうと思えるほどのセービングは、あまり記憶にない。
ロジェール・イバニェス
【出場:48】【得点:3】【アシスト:-】
いまや鉄板となった3CBを支える重要なピースで、際どい対人戦やパスカットに挑み続け、高確率で制してきた。平均インターセプト数と空中戦勝率はリーグ屈指、地上戦勝率でもわずかながらもスモーリングを超えるなど、相手の攻撃の芽を摘み取るような守備は数値にも表れており、ボールリカバリー数もローマでは飛び抜けて多い。一方、大きなネックとなったのは、重要度の高い試合での退場処分や、失点に直結するミスの数々。ローマダービーやインテル戦といった順位に響く一戦での失態は、チームにとって大きな痛手となった。
【6.5】
基本的には常にハイパフォーマンスだった。個人的なエラーでピンチを招いた回数がゼロに近ければ「7.0」でもよかったが、それはタラレバでしかない。
クリス・スモーリング
【出場:47】【得点:3】【アシスト:1】
相手フォワードの前に立ちはだかる大きな壁となり、無敵の対人戦は今シーズンも健在。とくにエアバトルは勝率76%でセリエAにおけるCB陣の頂点に立ち、地上戦でも60%とトップクラスを維持したほか、ファウルの少なさも相変わらずでリーグ屈指だ。ポゼッション時の貢献度は並程度かそれ未満かもしれないが、マンチーニやイバニェスに仕事を分散しながら、盾としての振る舞いに専念することで自らの長所を存分に発揮してみせた。加入当初から主戦力ではあるが、おそらくモウリーニョ監督にとっては中央のCBとして理想的な存在であり、重要度がより一層増したような格好だ。
【7.0】
対人戦の勝率は昨シーズンの方がやや優れているが、自陣に引く時間帯が長い試合ではやはり大きな存在感を放った。
ジャンルカ・マンチーニ
【出場:51】【得点:1】【アシスト:4】
スモーリングやイバニェスと同じくエアバトルで優れた勝率を誇るなど、引き続き安定した守備力を発揮した。逆サイドのイバニェスとは別の手段で攻撃にかかわることが多く、とくに右サイドのタッチライン際を駆け上がるシーンがよく見られ、アシストにつなげたこともあった。進歩を感じさせる部分でいえば、カード枚数の減少があげられる。出場停止処分で6試合を欠場していた過去2シーズンとは異なり、今季はそれを2試合にとどめた。ELではオウンゴールとPK失敗で悔しいエンディングを迎えたが、昨季に続く決勝戦でのアシストも忘れてはならない。ユベントス戦でのミドル弾も印象的。
【6.5】
「7.0」と迷うところだが、4季連続の「6.5」を与える。僅差ながらもベストシーズンだったのではないだろうか。
ディエゴ・ジョレンテ
【出場:12】【得点:-】【アシスト:-】
なかなか芽が出ないクンブラに代わり、控えの一番手の地位を確保。それどころか、一時的ではあったがイバニェスよりも優先して起用されているような時期もあり、第28~30節には無失点で3連勝に貢献した。この夏にもローマは買い取りを試みることになりそうだ。守備は堅実で穴をつくらず、信頼に足るボールの預けどころにもなる。攻撃的なポゼッション戦術で話題になったラージョ・バジェカーノ時代にブレイクした経歴を裏づけるようなキックの正確性も特徴で、パス成功率はローマのCBでは最高値となり、とくにロングパスは頭一つ抜けている。
【6.0】
信頼の置けるCB。冬加入のため出場機会は多くないが、ポジティブな印象。
レオナルド・スピナッツォーラ
【出場:40】【得点:2】【アシスト:5】
低調なパフォーマンスに終止する時期が長く、EURO2020で披露したような好プレーは散発的だった。20-21当時のスタッツと比較しても、高いポジションでのボールタッチ、ドリブル突破、チャンス創出の頻度が落ち、以前のような輝きが失われていたことは否定できない。しかし、それでもSB(WB)の選手としてはリーグで五指に入る平均ドリブル突破数を記録しており、やや復調傾向にあった2月ごろをはじめ、シーズン全体の中で実力を示せた部分はある。先発27試合で2ゴール・5アシストという結果も、決して悪くはないはずだ。
【6.0】
期待値を下回ったのは事実だが、絶対的なクオリティでいえばWB陣の中で最も優れていたのではないか。
ニコラ・ザレフスキ
【出場:47】【得点:2】【アシスト:1】
トップチームの一員にすっかり定着したことは立派だが、主要なスタッツで昨シーズンを超えるようなものはなく、プレー内容は充実したものとはいえないだろう。昨季との違いは、右サイドを担う機会が増えたこと。左足でも蹴れる選手ではあるがボールのもち方は右利きのそれであり、去年よく見られた個人突破は鳴りを潜め、単にクロスを放り込む選手と化した時期があった。また、1対1の守備やマーキングに難があり、イエローカードを覚悟した上でのファウルといった、苦しい対応も少なくない。リードして守備を固める展開が多い今季において、特別に重宝される存在ではなかった。
【5.5】
個人技を活かした良いシーンもあったが、今後に向けた勉強の1年だったという印象の方が強い。
リック・カルスドルプ
【出場:18】【得点:-】【アシスト:-】
ここ数年はレギュラーの座を確保していたが、今シーズンは急落。もともと問題視されていたとの声もあるが、第14節のサッスオーロ戦で怠慢なプレーが見受けられたことをきっかけに、モウリーニョ監督の判断で数カ月間は戦力外の扱いを受けた。また、それに加えて負傷で離脱した期間もあるため、結果的には合計およそ30試合は欠場したことになり、EL決勝進出などで盛り上がるチームにおいて、途中からは蚊帳の外に置かれたような状況が続いた。また、出場時のプレーの質が特別落ちていたわけではないが、良いペースで積み重ねていたアシストは今季ゼロに終わった。
【4.5】
モウリーニョとの間になにが起こったのかは詳しく分からないが、負傷期間も含めて欠場が多かったという事実に変わりはない。出場時はせめてチェリクやザレフスキとの違いを見せたかったが、それも不十分だった。
ゼキ・チェリク
【出場:34】【得点:-】【アシスト:1】
カルスドルプがいればベンチが定位置、いなくてもザレフスキの方が優先的に起用されるなど、なかなか確固とした地位を築けないシーズンだったが、EL決勝戦では先発出場を果たした。守る時間が長い今季のローマには守備能力のあるWBが必要であり、その点でモウリーニョのお眼鏡に適う存在だったのか、終盤になってようやく信頼度が増してきたようだ。目立ったスタッツはないが、強いていうならボールリカバリーとシュートブロックはWB陣の中で最多と、やはりディフェンス面の貢献があげられる。なお、リール時代は得点関与の多い選手だったが、今季は数字に表れる成果をほぼ出せなかった。
【5.5】
不可欠な存在ではなかったが、チームのために走れる選手。「6.0」に近い。
ブライアン・クリスタンテ
【出場:53】【得点:1】【アシスト:3】
まずは、今シーズンもいつもどおりのフル稼働を高く評価するべきだろう。フィールドプレーヤーの中では最長出場時間を誇り、出場停止処分以外では一切欠場しなかった。プレーの内容にはやや変化が見られ、近年はパス回しの支点として活躍していたが、今季はその役割をマティッチに振り分け、自身はより守備的MFとしての責務を果たそうと努めた印象だ。具体的にはボールタッチおよびパス、チャンスメイク、敵陣でのプレー頻度の数値を落とし、その一方でボールリカバリー、タックル成功、地上・空中の対人戦勝率、ブロックなどの平均回数は自身の過去最高レベルを記録している。片手で数える程度だが、CBでのプレーにも無難に対応した。
【6.5】
加入してから丸5年が経過した今でも地位は揺るがない。GREATではないかもしれないが、GOODではある。
ネマニャ・マティッチ
【出場:53】【得点:2】【アシスト:2】
キーマンの一人。リーグ戦では先発16試合と適度に休息を与える必要性があったように思われるが、ELのノックアウトラウンドでは1試合の欠場を除いてほぼフル出場を続けており、ここぞという試合で重要視されたことが分かる。昨季のヴェレトゥやオリベイラよりも行動範囲の重心は低いが役割は多岐にわたり、静的だったクリスタンテに比べると敵陣でのプレー頻度が高かった。ボールタッチがだれよりも多く、パスの正確性もあり、左サイドに流れればチャンスメイクにも関与。そのほか、インターセプト数はクリスタンテの倍を超えるなど、本業ともいえる守備面でも実力を見せた。
【7.0】
プレー時間でいえば、実は3分の2にも満たない。しかし、その存在感は絶大だった。
ジョルジニオ・ワイナルドゥム
【出場:23】【得点:2】【アシスト:-】
シーズン前半を棒に振る骨折が痛手となり、これといった活躍がないままレンタル期間を終えることになりそうだ。復帰を果たすころにはマティッチがレギュラーポジションを確保していたため空席はなく、重要度の高い試合での先発出場はフェイエノールト戦の2ndレグくらいだった。また、ターンオーバー要因となったことでペッレグリーニの代わりのような形で出場することもあったが、そもそもその主将もスキルを活かす機会に恵まれないシーズンを送る中で、代役のワイナルドゥムも効果的なプレーをするのは困難だった。基礎的な技術の高さを感じさせる選手ではあったが、いまだにムヒタリアン不在を嘆くことがあるロマニスタの期待に応えたとはいいがたい。
【5.5】
開幕早々に離脱した不運を嘆くしかない。シーズン終盤の日程が過密になるタイミングで再度負傷したことも痛かった。
マディ・カマラ
【出場:21】【得点:-】【アシスト:1】
ワイナルドゥムの長期離脱を受けて急遽加入に至った選手だが、起用法としてはそれ以上でも以下でもない。21試合に出場したがワイナルドゥムと同じゲームに出たのは3回だけで、ELではノックアウトラウンド以降は一度もプレー機会を与えられないなど、あくまでもバックアッパーとしての務めを果たしたといったところだ。ただし、試合展開を左右するようなプレーヤーではなかったとはいえ、パフォーマンスの質は悪くはない。精力的な上下動はクリスタンテやマティッチとの差別化を図れるもので、10~11月には間違いなくチームメイトを支える存在だった。
【5.5】
ボーヴェの成長も響き、シーズン後半は出場機会が限定的だった。このままレンタル期間を終えるだろう。
エドアルド・ボーヴェ
【出場:33】【得点:2】【アシスト:-】
2列目と3列目のみならず、場合によってはCBや右WBと、万能がゆえにさまざまなプレーを求められる側面はあったが、セントラルMFとしての歩みを進み始めるようなシーズンとなった。開幕してからしばらくは出番が少なかったものの、冬以降には出場チャンスを掴む。ELセミファイナルでの決勝ゴールでトップチームの一員として本当に認められたような雰囲気を感じさせ、2ndレグを控えたリーグ戦ではターンオーバーで休む側に回るなど、地位を固めていった過程が印象深い。しかし、EL決勝戦でほとんど出番がなかったように、ベストメンバーが揃えばまだバックアッパーでしかないようだ。
【6.0】
印象は良いが、冷静に判断して「6.0」どまり。タックル成功数の多さ以外で際立ったスタッツを残せていないが、来季はどんな進化を遂げるだろうか。
ロレンツォ・ペッレグリーニ
【出場:48】【得点:8】【アシスト:9】
14得点を記録した昨シーズンに比べると、うまくいかないシーズンだった。攻撃時の主役をディバラに譲り、昨季に担っていたセカンドストライカー的な仕事は激減。8得点・9アシストという結果は悪くないようにも見えるが、実のところは大部分がセットプレー絡みとなっている(それはそれとして高精度で素晴らしいキックだが)。また、重心を低く保つチームの戦術上では正しいのかもしれないが、本来の感覚では必要以上に守備的なサポートに労力を割いている印象があり、タクトを振るゲームメイカーだったわけでもなく、どっちつかずのプレー内容だった。ただし、不調な中でもチャンスメイク数はリーグ屈指であるほか、タックル成功、地上戦勝率、シュートブロックといった守備的なスタッツは軒並み自身の過去最高レベルを記録している。
【6.5】
どこからどこまでが監督の指示なのかは不明だが、ペッレグリーニについてはもっと活躍させる手段があるに違いない。ELの公式ベストイレブンに選出されるなど、優れた技術と豊富な運動量による底力はあった。
ステファン・エル・シャーラウィ
【出場:42】【得点:9】【アシスト:2】
エル・シャーラウィの長所が出たシーズンとなり、それほど多くはない出場時間で、さらにはウイングバックとしても献身的に仕事をこなしつつ、9ゴールを決めてみせた。得点ペースはディバラに次ぐ数値となっている。また、90分あたりの枠内シュート数、ドリブル成功数ではディバラやペッレグリーニと同等またはそれ以上の記録を残しており、ボールの回収数ではスピナッツォーラやザレフスキといったウイングバック勢のライバルをわずかに超える。戦術的な中心選手ではないが、総合的な貢献度は高いといえるだろう。なお、ローマでの合計ゴール数では歴代のトップ20入りを果たした。
【6.5】
2つのポジションでそれぞれ活躍した。最終節ではディバラの決勝点を生むPK獲得という大仕事。
パウロ・ディバラ
【出場:38】【得点:18】【アシスト:7】
細かいスタッツを用いた説明はもはや不要。アタッキングサードでもミドルサードでも技術の高さを見せつけ、加入時の高揚感を損ねさせない完璧なパフォーマンスでオリンピコを湧かせ続けた。18得点・7アシストという結果が単純に優れているだけでなく、試合に出れば絶対に大きな仕事をしてくれるという圧倒的な信頼、加えてビッグゲームでのパフォーマンスなどを考慮すると、チームにとっては数字以上の影響力をもつプレーヤーだった。EL決勝戦でのケガを抱えながらの先制点、試合後の涙、そしてELに再挑戦する権利を勝ち取るPKを目のあたりにして、新シーズンもディバラについて行くと誓ったロマニスタは多いはずだ。
【7.5】
その可能性があるのは初めから分かっていたが、唯一のマイナス要素は稼働率の低さ。プレーした時間は全試合のちょうど半分くらいだった。プレーの質そのものは「8.0」か「8.5」に相当する。
オラ・ソルバッケン
【出場:14】【得点:1】【アシスト:2】
冬の新加入選手の一人。因縁のボデ/グリムトから獲得するという話題性はあったが、エリテセリエンでのいまひとつパッとしない成績から判断すれば、3ゴールに直接関与したという結果は期待ハズレというほどでもないか。決勝ゴールで勝ち点3をもたらしたエラス・ヴェローナ戦での一発以外では、シーズン終盤の過密スケジュールの中で出番を増やし、ときおりドリブル突破でチャンスを生んだことは評価に値する。しかし、この期間であと2~3回はゴールやアシストを重ねたかったところだ。別格のディバラを抜きにしても、ほかの選手と比較して際立ったスタッツはとくにない。
【5.5】
出場すればある程度の活躍を見せる試合もあったが、たまに行われる「冬の謎移籍」の一種だと、今のところはそう思う。
タミー・エイブラハム
【出場:54】【得点:9】【アシスト:6】
昨季に遠く及ばないゴール数はまったく物足りないが、アシストやそれに近いプレー(シュートの跳ね返りを味方が押し込むケースなど)を含めれば21得点に絡んでおり、実質的な得点関与は少なくない。また、1試合ごとの得点期待値との乖離では前年よりも小さなマイナスにとどめ、枠内シュート率は前年超えであるため、不調のワケを「決定力」の一言で済ませるのは忍びない。悪化した数値はシュート数、シュート1回あたりの得点期待値であり、要するに質の高い決定機の減少こそが根本的な問題点。ザニオーロ退団によるターゲット役の比重増と、チーム全体のバランスが後方に下がったことによる孤立、あるいは孤立を避けるためのポジショニングの後退が、最大の要因ではないか。
【6.0】
得点数が伸びなかった理由がチームの構造に隠されていると思うと気の毒。とはいえ、できる限りの仕事を最大限こなしたとは到底いえない。
アンドレア・ベロッティ
【出場:46】【得点:4】【アシスト:2】
カンピオナートでゴールなしという結果に終わり、公式戦全体でも4得点と寂しいシーズンになった。リーグ戦では1146分(90分単位に換算すると約13試合相当)出場と、何回かのゴールのためには十分な時間を与えられたが、仮に期待値どおりに得点できていたとしても2~3ゴールどまり。本人に責任がないとはいわないが、つまりそれ以前に良い状態でシュートできる環境になく、トリノ時代の平均シュート数と比べると今季は半分以下となっている。なお、中盤に下がってボールに触る傾向のあるエイブラハムに比べ、ベロッティはアタッキングサードでパスを受ける頻度が高く、ボールを相手ゴール方向に運んだ距離も長いなど、前進しようとする姿勢が見受けられた。
【5.0】
チーム戦術による被害者とも捉えられるが、セリエAでのノーゴールは「いくらなんでも」といったところか。
なお、冬に移籍したザニオーロ、ビーニャ、ショムロドフ、出場時間の短いクンブラ、タヒロビッチ、ヴォルパート、スヴィラール、ミッソーリ、ファティカンティ、マイフシャク、ピジッリ、および出場機会がなかった選手は評価の対象外とする。
採点まとめ
【7.5】ディバラ
【7.0】マティッチ、スモーリング
【6.5】マンチーニ、クリスタンテ、イバニェス、エル・シャーラウィ、ペッレグリーニ
【6.0】スピナッツォーラ、ボーヴェ、エイブラハム、パトリシオ、ジョレンテ
【5.5】ザレフスキ、チェリク、ワイナルドゥム、カマラ、ソルバッケン
【5.0】ベロッティ
【4.5】カルスドルプ
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