ASローマ×パウロ・ディバラ
- おしょう
- 2022年7月24日
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更新日:2022年7月24日

文句なしに素晴らしい選手の加入が決まったため、さっそく新しいシーズンのことを想像しよう。先週までの陣容にパウロ・ディバラを上手に組み込むぞ!ということがテーマになるが、そのうえで論点になるのが①ディバラとザニオーロのプレーエリア重複、②ディバラとペッレグリーニの役割重複、③ムヒタリアン退団のダメージ、④守備面の不安(豪華アタッカー同時起用の困難、ザニオーロあたりの序列懸念)――といったところだろう。ディバラの起用法、あるいはそれに関連してペッレグリーニやザニオーロの役割に不安材料はないだろうか。予想されるディバラのプレーをもとに探る。
【ボールに触れてリズムをつくる】

ディバラとザニオーロのプレーエリアがかぶる懸念はあるが、プレースタイルが似ているということはない。まず、昨季のディバラは90分平均のボールタッチ数が69回であり、ザニオーロ(48回)に比べてかなり多い。ユベントスとローマは試合あたりのパス数がだいたい同じで、チーム全体における選手個々のパス率(チームの総パス数のうち当該選手がパスをした割合)としては、ザニオーロが4.5%、ペッレグリーニが8.0%、ムヒタリアンが8.8%であるのに対して、ディバラは9.5%なっており、最もボールに触れる機会をつくろうとする傾向にある。
【右サイドでボールの預けどころに】

ディバラはパス全体のうち38.7%を自陣でおこなっているため、ザニオーロ(28.0%)、ペッレグリーニ(31.0%)との比較では大きく異なり、ムヒタリアン(39.2%)と同等だ。カウンター時のターゲットでもあるザニオーロはもちろん、ペッレグリーニも(守備時の帰陣はあるが)基本的には最終局面でチャンスに絡むプレーを好む。ピッチの右側に寄ることの多いディバラは、直線的なザニオーロやカルスドルプが君臨する右サイドにパスワークの基点を生み、クリスタンテあたりにパスコースの選択肢を一つ多く与えるだろう。中央・左・右を問わずに輝けるペッレグリーニは、ディバラとザニオーロが同時に出場するのであれば、やや左寄りに位置してスピナッツォーラやザレフスキとの好連携を求められることになるか。
【下手にボールを失わない】

また、ディバラはプレーに絡む頻度が最も多いにもかかわらず、ボールロストの実数が少なく、その確率も高くない。タッチ数とボールロスト数から算出する単純計算ではあるが、ザニオーロはプレーに絡んだ際に36.5%の確率でボールを失っており、ペッレグリーニも29.5%とそれほど低い割合ではない(ムヒタリアンは20.1%でロストがダントツで少ない)。一方、ディバラは23.0%にとどまっており、プレー関与の数を考慮すれば確実性が備わっていることがわかる。「ザニオーロやペッレグリーニはドリブルや難しいパスに積極的だから仕方ないのでは?」という感もあるが、ディバラはキーパス数がザニオーロよりも多く、ドリブル突破はペッレグリーニよりも多いうえに、ロングパスで局面を変える頻度も一番高く、悪い意味での簡単な選択が多いわけではないだろう。なお、セリエAの年間MVPに選出された19-20でのスタッツにいたっては、(21-22の)ザニオーロよりもドリブル突破をするうえに、ペッレグリーニよりもチャンスメイクをするといった具合の活躍ぶりだった。
【シュートがうまい】
近年ゴールを量産したわけではないが、シュート技術は確実に高い。ペナルティ・エリア内でのシュートはエイブラハムやペッレグリーニ、ザニオーロよりもやや少なく、点取り屋の役割に強くはこだわらない。一方、エリア外からのシュートはリーグでもトップであり、遠距離で得点を狙える貴重な存在になる。昨季ディバラはボックスの外から4得点を決めたが、ローマはフリーキックを除くとチーム全体で3回しか決まらなかった。
【新シーズンのアタッキング・ユニットはどうなる?】
昨季のパフォーマンスやチーム構成のバランスを考えれば、エイブラハムの後方でペッレグリーニとディバラが並ぶ形になりそうだ。昨季はムヒタリアンを中盤に組み込んで豪華な同時起用を可能にしたが、より攻撃的なディバラを同じように起用できないため(守備面のスタッツはザニオーロと同程度)、ザニオーロはオプション的な役回りになる可能性がある。ペッレグリーニはポジションを下げることもできるが、長所を発揮しにくい形をわざわざ基本型には据えないと予想する。
懸念材料があるとすれば、ペッレグリーニとディバラは両者とも攻撃面において万能型で多彩ではあるが、明確な仕事分担は難しく、使われる側の立場になる選手がエイブラハム(+両ウイングバック)だけになりかねないこと。ディバラはピッチの中央付近でボールに触る機会をつくるため、ペッレグリーニは昨季以上にアタッカー化が進むかもしれない。エイブラハムを孤立させないこと、さらには使う側と使われる側のハイブリッドを要求されるとすると、それに応えることができるのはペッレグリーニしかいない。
ムヒタリアンと同じことができる選手はいないが、中盤で運び、チャンスにも絡むという点ではディバラも可能。守備面はペッレグリーニ、ザニオーロ、エイブラハム、ディバラの同時起用を避ければ大きな問題はないだろう。
また、現状ではクリスタンテとマティッチが中盤でコンビを組むことを考えると、3列目からの攻め上がりには大きな期待ができない。フラッテージやワイナルダムあたりの加入を待つか、(放出の可能性はあるが)ヴェレトゥを再び重宝することを検討する余地がありそうだ。
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