フロレンツィ 半年間の別れが決定的に
- おしょう
- 2020年1月31日
- 読了時間: 5分
更新日:2020年2月1日

我らがカピターノ、アレッサンドロ・フロレンツィの移籍が確実となった。新天地はスペインの名門バレンシアだ。今後にローマあるいはバレンシアが条件変更を求めて話がこじれようとも、メディカルチェックで問題が発覚して破談になろうとも、ローマが放出を容認したこととフロレンツィ本人がそれを受け入れたという事実は変わりない。バレンシアの事情には疎いので詳しいことは分からないが、ローマ(あるいはフォンセカ監督)やフロレンツィにどのような考えがあるのか、ただのロマニスタには計り知れないこともあるが、予想する程度のことは可能だ。また、多くのロマニスタと同じように、自分の意見を記したい。
【戦力として】
まず戦術的な要素で判断するならば、少なくともフォンセカ監督は彼を必要としていない。チームに残ったとしても出場機会はそれなりに与えられるだろうが、重要な戦力にはカウントされない。ロマニスタの反応に「怒り」よりも「寂しい」や「悔しい」が多いのは、戦術面から判断して、放出するなと主張できる理由が少ないからだろう。どこか納得できてしまう状況にこれまで活躍してきたフロレンツィの姿を重ねて、生じるギャップにモヤモヤを感じるのではないか。今シーズンのパフォーマンスを批判することと移籍を悲しむことは矛盾しない。
今のローマには右サイドバックでプレイできる選手が多く、代役ならチーム内にいるという状態だ。スピナッツォーラがレギュラーに最も近い存在と思われるが、たったの2週間前に移籍寸前となったことを考えると、彼もまた確固たる地位を築いてはいない。このポジションに絶対的な存在はない。
それではなぜ放出対象がフロレンツィだったかというと、まずスピナッツォーラの移籍が叶わなかったためにローマが他の選択肢を考慮する余地が生じたため。ポリターノが加わらなかったとはいえ、ウンデルの躍動により右ウィングでの序列も低いため。そして、バレンシアがフロレンツィを欲しがったため。また、本人がユーロ2020に出場する可能性を高くしたいと考えているとも思われる。来季のローマでどのような扱いになるのかは、今後の半年間で決まるだろう。無事にそこでローマに必要とされたとしても、また新しい競争が待ち受けるわけだが…、こればかりは避けられない。
【ローマユース出身/カピターノ/トッティとデ・ロッシの後継者であること】
個人的な話にシフトするが、自分はデビュー当時からフロレンツィを応援していて、完全に特別な存在だ。現役選手で世界一好きな選手といっても過言ではない。それはローマ出身のプリマヴェーラ育ちだからではない。正確にいうと、ローマっ子であることは応援する理由ではなく好きになる要因の一つであり、好きだから応援するのである。そして、クロトーネから戻った2012年からの7年半で、数々のカッコいい姿を見せてくれたから好きなのだ。単純レンタルのためローマでプレイする未来は残っており、思い出話をするには数年早いだろう。しかし、彼が単なる自チーム育成枠の選手でないことは、思い返せばよく分かる。
ところで、トッティとデ・ロッシの後継者としては役不足という意見を目にすることもあるが、少なくとも競技面においては同意する。…というよりは、そんなことは分かっている。良くも悪くも、彼はセリエAで結構強いローマにおいて6~7年間ずっとレギュラークラスの地位を維持してきた選手であり、おそらくそれ以上のプレイヤーではない。また、フロレンツィは腕章を巻くことを誇りに思っているだろうし、それを望んでいたかもしれないが、そうなりたいからなったのではない。希望すればセリエAのトップチームでキャプテンになれるのではなく、そうなるに相応しい(と判断されるための)歴史を築いた彼だからこそ、重い役割を任されたのだ。ローマで育った多くの選手が他のチームで挑戦する(せざるを得ない)のに、フロレンツィはこれまでローマで戦ってきた、あるいは今後もそうなるということを、ファンはもう一度認識するべきだ。レベルの高い選手ともいえるし、比較対象によっては物足りない選手でもある。このレベルであることによりトッティやデ・ロッシになかった苦しみを味わっていて、自身の成長に伴い、それに背を向ける道は閉ざされていったのだ。
一つ正直にいうと、フロレンツィが引退するまでずっとローマに留まるとは思っていない。トッティやデ・ロッシが長くローマでプレイしたのは、トップクラスの中でも特に高い次元にいる選手だったからである。戦力として計算できなくなるタイミングが(後者においてはそれすらもなかったが)、普通は引退するような時期と重なるからである。現実的な予測をすると、フロレンツィがローマで現役生活を終える可能性としては、ローマが弱くなるか、引退時期が特別に早いか、そのどちらかしかないように思う。そんな彼を情けないと感じるのは勝手だが、それを覚悟している身としては、問題点はそこにはない。
ポイントは、一時的とはいえローマを去るのが今冬だなんて予期していなかったことだ。あと3年くらい経ってから考えるつもりだったからだ。寂しさが込みあげてくるのも、今の時点でその覚悟ができていなかったからだろう。たったの半年で失格扱いを受けたような状況であることも悔しい理由として挙げられるが、そうであるならば「たったの半年」くらいローマを去ることを受け入れる姿勢でいてもいいと思う。それも立派な覚悟だ。そして、最も重く受け止めているのは他でもない本人だろう。
これまでローマに捧げる日々を送ってきたからこそ、国外での経験は新鮮なものになると思う。空港での寂しそうな姿はロマニスタにはある意味では嬉しいが、バレンシアのチームメイトやファンには活力のあるプレイを披露してほしい。ローマにいることでしか得られない喜びもあれば、特有の苦悩もあったはずだ。新天地ではフレッシュを取り戻して、そしてまた強くなって戻ってきてくれ。好きだから。またな。
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