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グラフィックデザインで見るローマ

  • 執筆者の写真: しゅんぴ
    しゅんぴ
  • 2019年9月27日
  • 読了時間: 10分

はじめまして。しゅんぴと申します。

日韓W杯でトッティのプレイを見て以来、ロマニスタです。


サッカーを見るのは好きですが、競技面においての専門的なことはわからないので

自分の職業であるデザインの観点から何か書くことができればと思います。

サッカー×デザインとしてまず真っ先に思いつくことと言えばやはりエンブレムでしょうか。エンブレムはまさにチームのアイデンティティであり、そのクラブを体現しているものであります。


近年ではローマと同じくセリエAのユベントスがいわゆるサッカークラブ的な紋章からミニマルでモダンなロゴに変更したり、日本ではあまり話題になっていませんがミランも今年(?)新しいブランドルールを作成しました。(ミランの新アイデンティティは少し興味深いのでまた後ほど書きます)


どのクラブも定期的にエンブレムをブラッシュアップ、もしくは抜本的なイメージチェンジをしており、ローマも他のクラブに違わず何度かのエンブレムの変更をしています。

近年でいうとやはり2013年に現オーナーであるパロッタ就任後に行われた変更が大きなものでしょうか。まずは画像でみてみましょう。



ベースとなる構成要素、大きなデザインはこれまで使用されたエンブレムを踏襲していますが細かい点でいろいろと修正や変更が加えられています。パッと見ての視認性をあげ現代的なデザインにしたいという意図がみてとれます。もとのデザインはローマに伝わる伝説のLupa Capitolinaのイラストがだいぶ細かいのでそれのブラッシュアップ。ローマというクラブを知らない人でも誰が見てもイタリアの首都のチームだとわかるようにASRをROMAという表記に変更しています。


デザインはGaspar GuerraというNY、ブルックリンの人が担当しているみたいです。

Webサイトはこちら。なぜこのデザイナーなのかは謎ですがパロッタの人脈でしょうか。



このポートフォリオサイトを見ると下記のような

ロゴの規定を結構細かく作成しているのがわかるかと思います。





これらはロゴマニュアルやブランドガイドラインと呼ばれ、ロゴを使用するときの決まりごとになります。例えば下のこの画像で言えばエンブレムの余白規定、もしくはクリアランスと呼ばれるものを設定しています。これはROMAの「O」を一つの単位とし、ロゴを使用するときはそのサイズ分の空間を必ずあけなければいけない、そのスペースに他のものを配置してはいけないという決まりです。ロゴのフォルムを適切に表示するためにロゴと関係ない文字や写真、図形などが近づきすぎることを防ぐためです。




また、下のこの画像では色の規定としてCMYK(印刷のインクの色)とRGB(ディスプレイなどの発光体の色)の値を規定しています。これは(当たり前ですが)赤や黄色であればなんでもいいわけでなく、我々ローマはこの数値の色をもってジャッロロッソとするという規定です。ミランやリバプールの赤とローマの赤は種類が違いますよね。

こういったニュアンスの違いを数値でしっかり定めることでアイデンティティの独自性をしっかり固めていく、デザインの基本中の基本です。しかしこの黄色は2016年に一つ前のエンブレムに近い明るい黄色に修正されています。どういった経緯なのでしょうか。視認性でいえば2016年以降の方が赤との対比が強くあり見やすいですが。


こういったガイドラインは企業やクライアントがロゴを正しく使用するためにロゴを製作する多くの場合に同時に規定をしています。通常のロゴ製作では当たり前のことですが、2013以前のエンブレムにそういったガイドラインが作成されていたかは不明です。




そして上でも少し述べましたが、2013年のリニューアルによるデザインの変化をあげると


  1. ローマの伝説であるLupa Capitolinaの狼のデザイン単純化

  2. ASRのモノグラムからROMAという表記へ変更

  3. フォントの統一

  4. その他、1927の年号追加など


これらの変更とデザイン的な是非に関して、下記のページが参考になるので引用しながら見てきましょう。自分もこのページの筆者の方とわりと近い意見を持ちました。





ローマの伝説であるLupa Capitolinaのデザイン単純化

Lupa Capitolinaをリデザインしています。これはこのロゴデザインの主要部分であり、更新が非常に必要なため、言わなければなりません。

しかし、私は彼らがそれが以前のものからあまりにも遠くに行き過ぎて、過度に単純化され、ほとんど漫画のようなスタイルでそれを作り直したと思います。

ある程度の深みを与えるには、陰影をより強調して、グラフィックの詳細と労力が必要でした。より多くのストロークと線を使用すると、方向線または交差線のどちらでも、より詳細な外観が得られます。

15%のグレーは貧弱ですが、白は以前に説明したようにうまく機能していましたが、メタリックシルバーは光沢でハイライト表示されていました。


(機械翻訳ですみません)


要はLupa Capitolina、以前のエンブレムのは写実的すぎるので更新は必要だけど、今回のはちょっと単純化されすぎていて、さらにこのクオリティはどーなのよ。もっとハッチング(線を交差させる書き方)などを使用して密度増やしたほうがよくない?色も微妙なグレーでオレンジと明るさが近くて映えてないよ?ってことですね


これに関してはほぼほぼ同意です。


例えばPentagramというデザインエージェンシーが手がけたAMERICN EXPRESSのブランドリニューアル。この例では以前ロゴで使用されていたクレジットカードの剣闘士の絵を更新しています。こういった線を整え現代的にするなどの手法もあったかもと思います。

2018年にPentagramがリデザインしたAMEXの剣闘士



ASRのモノグラムからROMAという表記へ変更

「ASR」を単に「ローマ」に置き換えます-メッセージをすぐに伝えるために明確に行われます。

「ASR」ではなく、単に「ローマ」、都市、歴史。 「私たちが誰であるかを伝えるため」。

私はその考え方を理解していますが、それは新しいロゴの最大の欠陥であり、Associazione Sportivaの誕生を表すクラブの歴史と遺産を完全に無視しています。


要はASRのASというのはローマ設立に関しての歴史、遺産の最大のアイデンティティなので

それをなくしてROMAだけにするのはわかりやいかもだけど絶対よくない、ということみたいです。これに関しては日本人の自分にはいまいち筆者の方の意見の感覚は伝わりづらく、

現地ロマニスタにとってのAS部分のこだわりはとても強いのでしょうか。ニュアンスわかる方がいれば教えて欲しいです。




フォントの統一

フォント。繰り返しますが、私は彼らがこれで何を意図していたかを理解し、ある程度同意します。目的は、古いスタイルのセリフフォントを使用して、ローマを歴史的、古典的、永遠に表現することです。以前は「ASR」のデザインが好きでしたが、デザインの観点からは、現代の(カスタム)サンセリフフォントは他のフォントには合いませんでした。新しい「ローマ」では、人気のクラシックセリフフォントである書体Trajan Proを使用しました。私は他のフォントを試してみましたが、公平に言うと、ローマという単語を組版しているなら、トラヤヌスプロはおそらくあなたが試した最初のフォントの1つなので、おそらくそれはおそらく最初に選ばれました。正直に言うと、見れば見るほど、それは彼らがやろうとしていたことと合っていて、最悪ではないと思います。販促資料や商品など、他の方法で見る必要があります。



ロゴタイプには「Trajan Pro」という書体が使われています。これはローマのトラヤヌスの石碑が元になった書体であり、ローマという歴史ある都を表現するには良い。ただこのエンブレムだけでなく販促資料やグッズとかどう使われるかで判断しないとね、という意見みたいです。これもある程度同意できます。Trajan (トレイジャン)はオーセンティックな書体で、映画のポスターなどにも多く使用されています。先週見に行った映画「アド・アストラ」でもオープニングでこの書体が使用されていました。気品のある書体ですし、ローマという歴史と文字の成り立ちが合うので問題ないかと思います。ただ、もし自分がこのエンブレムを作成するのであれば書体そのままではなく少し整える作業をしたかなと思います。また文字にかかる影は視認性が落ちるので必要ないかと思います。



オリジナルは書体そのままなので自分であれば文字の形状を少し整えたと思います



その他

1927年。すてきな追加。ローマの下にぴったり。灰色の色は、彼女のオオカミと同じですが、貧弱であり、赤の濃い色合いの灰色はうまくいきません。白のほうがいいでしょう。また、ドロップシャドウや「ローマ」のドロップシャドウは不要です。


これもほぼ同意です。色は個人的にはそこまで気になりませんが、細かくしてみると少し厳しいものがあるかもしれません


白い境界線は、それについて強い感触と存在感を与えますが、黒と白の等しい境界線はわかりません。また、リリースされた公式壁紙には白が含まれていないため、両方の境界線が常に表示されます(背景色が許可されている場合など)。


黒い罫線で全体覆っててそれは強くていいけど、黒バックになったときどうなるの?みたいな意味でしょうか。マニュアルをみるといろんな背景色のときの規定があるので、これに関しては問題なさそうですね。





エンブレム単体だけでない見せ方

エンブレム単体のデザインに関する話はこのあたりなのですが、エンブレムやロゴというものはそのもののデザインだけでなく、それらをどう見せていくか、どう伝えていくかが今日ではとても大きなポイントになっています。上で述べたようなデザインの要素を個々にばらして批評していくというのは、ちょっとズルいかもしれません。


例としてあげると今年行われたミランのアイデンティティのリニューアルを見るとローマに足りてない部分が顕著にわかります。

このリニューアルははDixon Baxiというロンドンのデザインスタジオが担当しています。



上記ページを見ていただくとわかりやすいかと思うのですがロゴ自体はほとんど(全く?)以前のものから変更なさそうですがとても新鮮でかっこよく見えますね。

これはロゴ自体ではなく、ロゴの見せ方使い方、ロゴの形状からインスパイアされたモーショングラフィックなど非常に現代的なアイデンティティの伝え方をとっているからです。

ロゴ単体の良い悪いももちろんありますが、現代ではロゴだけがポツンと見えてくることは少なくいろんなメディアや場所などロゴがどう使われてどう届いていくかが非常に重要になってきます。


例えばミランでいうと


ロゴの楕円形から発生する鼓動のような波紋。

その形状と選手の写真を組み合わせたデザイン

赤黒白を印象的に使用したカラースキーム。

ミランのストライプから派生したタイポグラフィ。



アイデアも多彩でクオリティが高いデザインです。こうしたものと比べると、ローマは自分たちのアイデンティをどうファンに伝えていくかというデザイン的な視点において、まだそこまで力を入れておらず改善の余地はありそうです。





デザインのクオリティはクラブのクオリティをあげる。

ここまで描いておいてなんですが

完成したデザインに関して、粗を探し後から細かい文句をつけるのはデザインの知識がある人からすれば容易く難しいことではありません。しかし0から1を作り出すこと、もしくは1を10にジャンプさせること、またローマのような歴史と伝統のあるクラブのエンブレムを変更するというミッションでどこを残し、どこを変更するかという決断をすること、これらは非常に難しく、知識があれば誰もができることではありません。


上の方でいろいろ言っていますが、

ロゴやエンブレムというものは半年、1年だけ使うものではなく5年、10年長くにわたってファンと一緒に育て上げるものです。そういう自分も現行のローマのエンブレムに愛着はあります。狼のぬけた顔も結構好きです。


だからデザインを気にしなくていいということはもちろんなく、

かっこいいデザインは、クラブとしてのクオリティを数段上にひきあげる力があると信じています。強いクラブ、世界的に知名度の高いクラブはかっこいいのです。その点、ローマはまだユーベやミランなどのクオリティには残念ながら届いていないのかなと思います。英語版公式twitterのいろいろな取り組み、今年でいえば迷子捜索など非常に面白い広報活動はできていると思います。一方でそこに確固たるビジュアル的なクオリティ感がでることでさらにクラブとしてパワーアップできるはずです。


是非、今後もデザイン面でも頑張って行ってほしいと思います。




 
 
 

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