パウロ・フォンセカのサッカー
- 酢ダコ
- 2019年6月23日
- 読了時間: 10分
更新日:2019年9月14日
シャフタール・ドネツクを率いていたパウロ・フォンセカが監督に決まりました。フォンセカのサッカーについて軽く調べてきたので、お伝えできればと思います。「概要」「攻撃スタイル」「各ポジションで求めそうな能力」「ローマだと誰が合う?」の順で進めます。後半に進むにつれて私の妄想が入ってきます。90分通して試合を観たわけではないですし、戦術理解に対しての誤認識もあると思うので参考程度にとどめてください。
※静止画や文字だけでの理解は苦手なので、下の動画はかなり参考になりました。よければご覧ください。
<概要>
基本フォーメーションは4-2-3-1です。ポゼッション志向で後方からのビルドアップを重視します。攻撃時は両サイドバックが高い位置に移動し幅をとり、サイドハーフは中央に寄ります。守備では、ラインを高く設定しコンパクトにまとめます。コンセプトとしてはディフランチェスコに近いものを感じます。弱点も当然似ていて、サイドからの速いカウンターと、裏への一本のロングボールです。
※背番号に深い意味はありませんが、この後の説明で楽になるので割り振りました。①や②のように丸で囲まれた数字は背番号を表しています

<攻撃スタイル>
守備時の戦術はローマ速報さんが丁寧に解説していましたので、攻撃面を中心に語ります。なお、17/18シーズンのシャフタールをモデルとして説明します。ローマと対戦した時のメンバーなので想像しやすいと思います。
序盤のビルドアップはセンターバックとボランチの4人が担います。4人は下図で記した赤線の四角形を維持することを原則として、パスやドリブルを織り交ぜて細かくポジションチェンジします。相手のプレスがきつくなると、トップ下の選手(⑩)が下りてきて数的優位を作ります。四角形の前方かつプレッシャーの少ない状況でボールを持つと一気に相手の急所へのパスを狙います。伝えづらいので上記の動画を見てもらった方が良いかもしれません。

ゴールに直結するような中央へのパスはほとんど通らないので、基本的に空いたスペースにいるサイドバックを使ってサイドでの崩しを狙います。高い位置でサイドバックにボールが渡るとサイドハーフがサポートし、2対2の状況を作ります。息の合ったワンツーで抜け出す形が多いです。ここが本当に上手いです。フォンセカの強みと言ってもいいかもしれません。実際、ローマの右サイドは何度も左SBのイスマイリーに突破されました。さらに強力なのは、突破してクロスを上げる位置がゴールに近いことです(下図の✖)。ただの縦突破ではなく斜めに走りこんでボールを受けることができている証拠ですね。これだけ近いとグラウンダーで可能性の高いクロスを供給できます。ジェコ任せとも言える、可能性を感じない高弾道クロスは減るかもしれません。

別の崩しの形としては、テクニックに長けた2列目(⑧⑩⑪)がパス交換やポジションチェンジをしながら隙を見てシュートを狙うというものがあります。相手のディフェンスラインが下がり2列目がペナルティエリア付近の位置になるまで押し込んだ時に有効でしょう。利き足と逆のサイドから巻くシュートが多いようです。また、CFの選手(⑨)に当ててワンツーからのシュートという形もあります。狭いエリアでのドリブル、パスそして強力なシュートが可能な選手が揃って初めて生まれる形です。マルロス(左利き)、タイソン、ベルナルジ(右利き)の3人の2列目はテクニックに優れ攻撃力がありました。
最後に、ボランチまたは2列目の選手がドリブル等で強引に突破してラストパスという形もありました。これは完全に個の能力に依存する形です。タイソン、フレッジが代表例です。
<各ポジションに求めそうな能力>
これらを考慮して、各ポジションでの基礎能力に加えてフォンセカが求めそうな能力を挙げてみます。フォンセカがこの夏に獲得を試みそうな選手像も見えてくるはずです。
・GK
ハイラインをカバーする広い守備範囲は求められるでしょう。高めのポジションにいるサイドバックへ正確に浮き球を通せるキック精度も欲しいところです。
・CB(④⑤)
これまで以上にビルドアップで大きな役割を担うので、パスとトラップを確実にこなせる足元の上手さは必須だと思います。ラキツキーのように一人は鋭いロングボールを蹴れると理想的です。加えて、高いラインの裏へのボールに対応できるスピードがあると重宝されそうです。
・SB(②③)
攻撃のカギとなるので推進力はもちろん、ワンツーで抜ける一瞬のスピードも必要です。また、クロスのスピードと正確性が求められると思います。
・DMF(⑥⑦)
ここは求められることが多いので万能な選手が2人いない限り、役割を分担すると思います。共通して必須となるのはパス精度と守備への貢献です。ステパネンコとフレッジを想定します。ステパネンコ(タイプ)はディフェンスラインの前に立ちふさがるフィルター役で、時には相方のボランチやディフェンダーがプレスする際にできるスペースを埋めます。周りに合わせた正確なポジショニングと、自分の守備範囲に敵が侵入してきたら激しく奪う対人守備力が求められます。一方、フレッジ(タイプ)はサイドへのプレッシングの火付け役として機動力を活かします。広い範囲でも追い回せるようなスピードと運動量が要求されるでしょう。また、フレッジはゲームメイクもこなしていました。楔のパスを常に狙い、時にはワンツーやドリブルでアタッキングサードに侵入するなどレジスタとしての能力があると理想的です。
・SH(⑧⑪)
独力での突破力よりはボールキープ力が重視され、ミドルレンジからでも狙えるシュート精度が要求されます。サイドバックとの連携が攻撃のカギとなるほか、トップ下との入れ替わりも頻繁にあるため周りを活かせる力がないと厳しいかもしれません。時にはディフェンスラインにまで戻る守備への献身性もこれまでと変わらず求められるでしょう。利き足と逆のサイドを担当するはずで、利き足に対するこだわりはディフランチェスコよりも強いかもしれません。
・OMF(⑩)
個人的にここを務める選手の特徴によってサッカーが全く違うものになると考えています。攻撃においては、組み立てのサポート、ドリブルでの局面打開、ラストパスのアイデア、強烈なミドルシュートのどれも求められるでしょうし、押し込んだ際には2トップの一角としてフィニッシャーにもなります。守備においても、相手CBへのプレスや、攻め込まれた際のプレスバックの役割を担うため運動量もかなり重要です。理想は「走れる」メッシですね。ただ、タイソンはこれら全てを一定以上の水準でやれていたと思います。
・CF(⑨)
正直ここの役割は理解できていません。憶測だけで語るので信用しないでください。ビルドアップは味方に任せ、自身が上下動することで相手のディフェンスラインの調節をしているように感じました。サイドでの崩しが中心となるのでクロスに合わせる能力が求められるでしょう。また、2列目での素早いボール回しや、彼らの侵入をサポートするためにワンタッチプレーの質が高いと2列目の選手の得点力が活かせそうです。
<ローマだと誰が合う?>
続いて、夏の去就が不透明なので無意味かもしれませんが、これらをローマの現メンバーに置き換えて考えてみます。ここからは私の願望が詰まっているので、「ふーん」くらいに思ってください。
・GK
キーパーとしての実力は未知数ですがタイプだけ見るとフザトが合っていると思います。
・CB
ビルドアップの能力とスピードを両立する選手がいません。マノラスもファシオも一長一短です。JJやマルカノがどうフィットするかを楽しみにしています。
・SB
総合力や連携面で右ではフロレンツィがベストに違いないですが、スピードやクロス精度に優れるカルスドルプは期待できそうです。サイドハーフとの連携プレーをあまりしないコラロフがプレースタイルを変えるか楽しみです。
・DMF
ステパネンコの役割はエンゾンジが適任でしょう。動き回ると彼の強みが活かせません。ディフェンスラインにカバーとして入っても遜色ない働きを見せます。一方、フレッジの役割を誰に任せるか、ここが一番の争点になりそうです。私は、今後の期待も込めてペッレグリーニを推します。そのテクニックとパスセンスによってトップ下でブレイクした彼にチームの司令塔を担ってもらいます。(ついでにローマの未来も担ってください。)また、向上したタックルの技術と、決して守備をサボらずプレスバックする姿勢を見込みました。一方、トップ下としての得点能力のなさも加味しています。ドリブル突破やミドルシュートなど、パス以外の部分では物足りなさを感じました。デ・ロッシの後継者として、武器であるパスで攻撃のスイッチを入れてもらいたいところです。
・SH
右利きの選手ではエル・シャーラウィが頭一つ出ています(髪のことではないです)。タッチライン際よりも内側で輝くタイプなのでぴったりだと思います。ワンタッチプレーやミドルシュートも上手いです。左利きのサイドアタッカーはウンデルだけなので右サイドは彼でしょう。仮に左利きの選手をコンバートするならば、周りを活かせる点でザニオーロよりもジェルソンの方が合いそうです。
・OMF
先述のように、配置する選手でサッカーが変わると思うのでベストな選択肢というものはない気がします。まずはパストーレ。スルーパス、ドリブル、得点能力に優れ、攻撃の部分では理想的な選手かもしれません。ただ、守備への献身性と運動量を考えると相手によっては起用を控えるかもしれません。ペロッティも似た感じです。続いてクリスタンテ。得点能力を期待されて入団したので本来この位置で輝くはずです。彼のボールキープ能力、両足から放たれる強烈なミドルシュート、ヘディングシュートの上手さを活かせると思います。パストーレとは異なる形で攻撃に迫力を与えるでしょう。プレスバックに必要な運動量も問題ありません。また、レジスタ向きの能力ではなく機動力もあまりないことから、フォンセカのボランチには向いていないと判断しました。実際、エンゾンジとボランチを組んだ今シーズン、効果的な縦パスが入らず攻撃が停滞する試合が幾度となくありました。ザニオーロもクリスタンテに似たような攻撃性能ですが、周りを使う意識がもう少しないとこのポジションは務まらないでしょう。まだ若いので今後の成長に期待です。
・CF
ここ数年のローマほどCFのポストプレーに依存することはなさそうなので、ジェコが退団したとしても案外ダメージは少ないかもしれません。組み立ては基本味方に任せて、クロスやスルーパスのタイミングで仕事すれば十分でしょう。シックにとって追い風になってほしいです。少ないタッチでのプレーに限ればジェコよりも上手いはずです。また、生粋のゴールマシーンとしてプリマで得点王に輝いたツェラル(Celar)はぴったりだと思います。年齢的にもトップチームに入るでしょう。
以上、フォンセカについて調べ無理やりローマに当てはめてみました。後期ディフランチェスコのサッカーに全体的に似ていますが、彼に足りなかった「崩しのアイデア」と「カウンターへのリスクマネジメント」が加われば、勝てるサッカーになると思うのでそこを期待しています。また、フォンセカは常にベストメンバーで戦うことを望む(ターンオーバーを好まない)ため、トレーニングであまり負荷をかけないなどケガの防止をとても重要視しているそうです。近年多くの故障者に悩まされるローマに大きなプラス効果をもたらしてくれるでしょう。
彼がチームをどう変えて、どれだけ魅力的なサッカーをするのか気になってきませんか!?来シーズンのローマの試合を観る理由が一つ増えたなら嬉しい限りです。チーム状況が良いとは言えない今のローマに減俸を受け入れてまで来てくれた彼の情熱的な姿勢と志に、私は感謝と期待しかありません。特に推しのペッレグリーニとクリスタンテがどう使われるのか楽しみです。いやぁ、早くシーズン始まらないかなあああああぁぁぁ!!
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