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ローマ裁判

  • 執筆者の写真: おしょう
    おしょう
  • 2021年3月6日
  • 読了時間: 7分

【登場人物】

① 弁護人(被告代理人)

② 検察官

③ 裁判官

※被告人のフォンセカは欠席です。こんな茶番よりもローマでの業務を優先していただきます。



 


裁判官それでは開廷いたします。


検察官:被告人は、ローマでの監督業において相応の働きをしておりません。


裁判官:被告代理人には黙秘権があります。この法廷で答えたくない質問に対しては回答を拒むことができます。さて、検察官が読み上げた起訴状に、事実と異なることはありますか?


弁護人:あります。被告人はローマに相応しい監督です。



 


裁判官:それでは、検察官は冒頭陳述をしてください。


検察官:はい。被告人は、セリエAにおけるライバルチームであるユベントス、インテル、アタランタ、ミラン、ナポリ、ラツィオに昨季からほとんど勝利していません。これは順位争いに大きな悪影響を及ぼします。また、ロマニズモと呼ばれる、ローマ人を軸に据えたチームづくりをしていないことも問題視します。ローマダービーで勝利していない点も印象が悪いです。


裁判官:弁護人のご意見は?


弁護人:事実としては同意いたします。しかし、被告人がローマの監督として不相応である証拠にはなりません。


裁判官:それでは、弁護人の立証をどうぞ。


弁護人:はい。まず、同格以上の相手に勝てない点について話します。先ほど検察官が挙げたような強豪チームに勝てないことを良しとするわけではありませんが、本来はそれ自体が問題なのではありません。重要なのは順位であり、ローマの目標であるCL出場権の獲得には手が届きそうな位置におります。裏を返せば、その他のチームには高確率で勝っていることを示しています。ラツィオは今季ローマやナポリ、アタランタに勝利しましたが、順位はローマよりも下です。その方が良いとはいえないはずです。


裁判官:4位以内に入ればローマとしては成功である、という前提があるのですね?


弁護人:今シーズンに関していえばその通りです。


裁判官:検察官は何かご意見がありますか。


検察官:はい。そもそもロマニスタは4位で満足しません。今季に限ればそれも構わないという向きはあるものの、長期的には少なくともCLの常連になることを望むファンが多いでしょう。4位が目標になるようでは困ります。


弁護人:もちろん、来季にはスクデット争いを目指します。


検察官:今のチームでは4位争いが限界だと思います。被告人は下位チームに対して確実に勝てるという前提を基に話しているようですが、それが続くとも限りません。実際にベネヴェント戦で勝ち点を落としました。また、同格以上のチームに勝てない点も改善が見受けられません。昨季も褒められた勝率ではありませんでしたが、そのときの方がマシなくらいです。そのため、今後もうまくいって4位という風な印象を受けます。しかも、この状況ではCLに出場できたとしても、うまくいくとは思えません。



 


裁判官:弁護人から他に述べることはありますか。


弁護人:ロマニズモを欠いている点について、説明いたします。被告人はそれを軽視しようとしているのではなく、正確にいえば、重視できる状況にないといえます。ロマニスタの望みは、トッティやデ・ロッシ、もしかするとジャンニーニのいた時代が背景にある場合が多いですが、そのときとは状況が異なることを多くの人が理解するべきです。監督の立場でロマニスタの願いを叶えるには、とにかくローマ人を試合に出すことが求められます。ペッレグリーニをレギュラーとして起用していることを考えれば、現状が最善のやり方のはずです。ただし、これは試合に勝つための判断にすぎません。なお、昨夏にフロレンツィを放出したのは被告人の意思とは異なります。


裁判官:フロレンツィの移籍が選手自身の最終判断によるものだとしても、そう決断しかねない状況をつくったのは被告人ではありませんか。被告人は、19-20シーズンでフロレンツィを戦術的に重要視せず、冬には放出を容認しました。


弁護人:被告人は選手を正当に評価しているだけで、戦術にそぐわない選手を重要視しないのは当然です。すべての選手を同じように出場させることはあり得ません。


裁判官:フロレンツィは現在パリ・サンジェルマンのレギュラー選手として活躍しています。正当に評価した結果が、ブルーノ・ペレスやサントン、ザッパコスタ、カルスドルプよりも格下であるということなのでしょうか。


弁護人:ローマとパリは違うチームなので、意味のある比較になりません。さらに、選手の移籍はそう単純なものではありません。選手の意向、金銭面、オファーを送るチームの性質など、様々な要素を総合した結果として移籍が決まるのです。能力の高さ順に慰留できるとは限りません。3バックのシステムを採用した背景もあり、被告人はフロレンツィを再びチームに戻すことも考えました。まさしく、これが選手の適性を正当に評価するということです。


裁判官:監督の都合で、ローマ出身選手の待遇を決めるのですね。


弁護人:出身に限らず、そういう場合はあるでしょう。


裁判官:ローマ人よりも試合結果や戦術を大事にするのですね。


弁護人:どちらかを選ぶのなら、その通りです。


裁判官:わかりました。検察官からもどうぞ。


検察官:ローマ人を特別視していないことはわかりましたが、これではローマの伝統を軽視していることになります。


弁護人:軽視しようと意図しているのではありません。あなたは「伝統」とおっしゃいましたが、それを継続させるための要素が今のローマにあると思いますか。トッティやデ・ロッシはローマ人だから特別な存在だったという部分もあるでしょうが、なによりも選手としての優れたクオリティが土台にありました。彼らが常にキープレイヤーだったのは、相応の実力があったからです。現状、当時と同じような状況にすることができないのです。ペッレグリーニもフロレンツィもイタリア代表に名を連ねる好選手ですが、偉大な先人たちと同じでないことを理解しなくてはなりません。


検察官:そうだとしても、プリマヴェーラの選手を積極的に使うなどは可能ではありませんか。


弁護人:先ほどにも述べたように、被告人は選手を正当に評価します。期待できる選手がいれば起用しますし、そうでないのならできません。


検察官:しかし、例年よりも少ないですよ。


弁護人:本当にそうですか。過去10年でトッティとデ・ロッシ、フロレンツィ、ペッレグリーニという実力者の他には、14-15にヴェルデ、13-14にロマニョーリが10試合程度に出場したくらいです。


検察官:…。


弁護人:例え積極的に若手を試合に出したからといって、それが大きく実を結ぶケースもあまり多くはないはずです。近年でペッレグリーニとフロレンツィ以外に該当する選手がいたでしょうか。ローマ人のラニエリ前監督は良い監督でしたが、ローマ人の若手がもつ才能を開花させたケースはあったでしょうか。厳しいことを言いますが、比較的多くの試合に出たグレコ、チェルチ、ロージ、オカカ、クルチといった面々が、結局のところローマの主力選手になっていないのです。さすがに、準レギュラーやバックアッパーにするために選手を育てるわけではないでしょう。


検察官:ロマニズモを体現する要素は出場数だけではありませんが、あなたの主張はわかりました。


裁判官:双方、立証は以上でよろしいでしょうか。



 


裁判官:それでは、検察官からご意見をどうぞ。


検察官:戦績については言い分があり、ロマニズモに関しては要因があるようですが、問題点が存在する事実は否定されませんでした。とりわけ、強豪相手の戦績はローマが体制を変えることで一変する可能性があるように見受けられます。ライバルチームに勝ち点を与えるようでは、必要な勝ち点のボーダーが上昇するため順位を上げにくくなります。また、あまりにも改善されないため、現状の4位争いが限界のように感じます。よって、被告人を「今シーズン終了に伴う解任の刑」に処することが相当と考えます。


裁判官:弁護人、どうぞ。


弁護人:ローマに問題点があることは認めますが、それらのすべてが被告人の責任を問われる内容だということはありません。若手の成長もありますし、来季に期待できないという意見は客観性を欠いております。ローマ人の件も、監督一人の交代で向上されるものではありません。被告人は3年目に向けた土台をつくりながら、今も4位確保の可能性がある状況にあります。寛大な処分を望みます。


裁判官:それでは、次回判決宣告をいたします。これにて閉廷いたします。



 


裁判官:これより、判決を言い渡します。主文。被告人を「執行猶予3ヶ月・今シーズン終了に伴う解任の刑」に処する。執行猶予期間中に「ラツィオを含む7強相手に3回勝利したうえで4位確保」または「EL優勝」の条件を満たすことにより、刑を消滅させることができる。



 


最後に、あなたのご意見を聞かせてください。


何を条件として(あるいは無条件で)、どんなタイミングで、どんな処罰が下されるべきでしょうか。あるいは、無罪判決でしょうか。



 
 
 

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