補強パターンでみる新戦力の期待値と信頼性
- おしょう
- 2021年8月22日
- 読了時間: 7分
【パターン1】セリエA初挑戦の年にブレイクした選手
[信頼度:C]
フアン・マヌエル・イトゥルベ(21)
イアゴ・ファルケ(26)
モハメド・サラー(23)
パトリック・シック(21)
マラシュ・クンブラ(20)
エルドル・ショムロドフ(26)
初挑戦のセリエAでの活躍は、ローマでの成功を保証するものではない。若手に対する高額出費が危険な賭けであることは、ローマが身をもって示してきた。
初のセリエAで8得点だったイトゥルベはローマ在籍時の2年間で3得点、13得点だったファルケは1年間で2得点、11得点だったシックは2年間で5得点に終わった。シックについては起用法が悪かったという声もあるが、実際には右ウイングよりもセンターフォワードで出場した試合の方が断然多く、あまり言い訳にはならないだろう。ファルケは安価だったが、他の2選手には多額の出費をしており、ローマは金銭的に痛手を負った。
成功例であるサラーに関しては、もともとバーゼル時代に自身のゴールでチェルシーを2回倒したという、CLでの実績があった。チェルシーでは活躍できなかったが、比較的成功する可能性が高いように思われていたサラーを、比較的安価で獲得できたことはローマの立派な功績といえる。ただ、売却はもっと高額にできなかったのだろうか。
ショムロドフは2人目の成功例になれるか。あるいは、クンブラがこれから巻き返すだろうか。
【パターン2】セリエAを最低1年間経験したあとにブレイクした若手
[信頼度:A]
マッティア・デストロ(21)
アデム・リャイッチ(21)
ロレンツォ・ペッレグリーニ(21)
ブライアン・クリスタンテ(23)
ジャンルカ・マンチーニ(23)
信頼感のあるパターンだ。セリエAの舞台で2~3年程度を費やして着実に進歩して若手の例で、前年のブレイクは唐突なものではなく、将来性と確実性を良い塩梅で兼備する。良くも悪くも賭けではないためスーパーな存在を発掘できたとまではいえないが、確実性の高い補強は毎年のように続けても損はないだろう。
【パターン3】セリエAで実績十分、好パフォーマンスを継続中の中堅
[信頼度:S]
マルコ・ボリエッロ(29)
フェデリコ・バルザレッティ(30)
メディ・ベナティア(26)
ラジャ・ナインゴラン(25)
ダビデ・アストーリ(27)
ブルーノ・ペレス(26)
ジョルダン・ヴェレトゥ(26)
獲得前年まで、飛び抜けて脚光を浴びるようなシーズンはなかったが複数年継続して高いレベルをキープしている、あるいはブレイクといえる時期もあったがパフォーマンスの質を数年保った中堅選手の例。初めから最低でも準レギュラーくらいは確保できると思われていた。
ナインゴランのような大成功例もあれば、ベナティアのように短期間の大活躍を経て高額で売却された例もある。獲得時に26歳と若手ではなくなっていたブルーノ・ペレスも複数年にわたりチームに貢献しており、質の低さを露呈した感は否めないにしても、他の「ハズレ」と比較すれば非難すべきような選手ではない。
若手を獲得する目的の本質が「若いこと」そのものではないと考えれば、こうした確実性のある補強にも大きな価値があるといえる。
【パターン4】セリエAでの実績あり
[信頼度:C]
ヴィクトル・イバルボ(24)
ウルビー・エマヌエルソン(28)
エルヴィン・ズカノビッチ(28)
ディエゴ・ペロッティ(27)
グレゴワール・デフレル(26)
マリオ・ルイ(25)
フアン・ジェズス(25)
アマドゥ・ディアワラ(21)
ダビデ・サントン(27)
レオナルド・スピナッツォーラ(26)
セリエAでそのポジションにおける代表的な選手ではなかったが、1シーズンよりも長くある程度のプレイ機会があった選手。一つ前の「パターン3」との境界が明確ではないので、あくまでも参考程度に。
このカテゴリーではもともと主力として見込まれていなかった選手が多いため、合否の判断がやや難しい。レギュラー格として期待された選手はペロッティ、マリオ・ルイ、スピナッツォーラあたりだが、成功率は3分の2。マリオ・ルイは負傷が響き、エメルソンの後塵を拝する1年を過ごした。
期待値に対して最低限以上の働きをしたのはフアン・ジェズスだろうか。ディアワラもクオリティは悪くないが、稼働率が低く、3年目もこれが続いてしまうと居場所を失うかもしれない。
右ウイングを探す過程で獲得したイバルボとデフレルは、両者合わせてもPKによる1得点のみに終わった。
【パターン5】プレミアリーグで評価が下降気味の中堅
[信頼度:S]
ジェルビーニョ(26)
マイコン(31)
マプー・ヤンガ=エムビワ(25)
エディン・ジェコ(29)
フェデリコ・ファシオ(29)
アレクサンダル・コラロフ(31)
ヘンリク・ムヒタリアン(30)
クリス・スモーリング(29)
国外のビッグクラブで価値を落としている中堅選手が「ローマならまだやれるだろう」と期待されて加入したケースでは、パストーレやエンゾンジといったイマイチな例がある。しかし、プレミアリーグに限定すれば間違いなく補強になっており(大ベテランの域に差しかかっていたアシュリー・コールとペドロは除き)、期待ハズレの例は1件もない。強いていうなら、マイコンとスモーリングは2年目以降に離脱が多く、ヤンガ=エムビワは手放しで賞賛できる出来ではなかったが、それを差し引いても、説明不要なパーフェクトに近い獲得実績といえるだろう。
【パターン6】5大リーグの除く欧州の若手
[信頼度:B]
ケヴィン・ストロートマン(23)
ティン・イェドバイ(23)
ウカシュ・スコルプスキ(22)
コスタス・マノラス(23)
サリフ・ウチャン(20)
リック・カルスドルプ(22)
ジェンギズ・ウンデル(20)
ジャスティン・クライファート(19)
アンテ・チョリッチ(21)
メルト・チェティン(22)
トップチームでこれといった実績のない選手の将来性を見込んでいた場合の成功率は低いが、レベルの高いところでたしかな評価を受けていた例、つまりストロートマンとマノラスはローマで成功を掴んだ。他の選手たちは最初に控え選手からスタートする前提で獲ったようなものだが、そこから成長して活躍できたのはウンデルとカルスドルプ。前者は徐々に市場価格を下げてしまったが、売りどきを誤らなければ今とは違う結果になっていただろう。後者は長く足踏みしたが、ようやく当初の期待に応えるクオリティに達してきた。
イェドバイとチョリッチのクロアチア勢、ウチャンとチェティンのトルコ勢はローマが才能を開花させる算段だったのだろうが、いずれも育成に失敗している。
【パターン7】5大リーグを除く欧州の中堅
[信頼度:D]
マールテン・ステケレンブルフ(28)
ヴァシリス・トロシディス(27)
ミシェウ・バストス(30)
セイドゥ・ドゥンビア(27)
ヨゼ・ホレバス(30)
ウィリアム・ヴァンクール(26)
クレマン・グルニエ(26)
エクトル・モレノ(29)
マキシム・ゴナロン(28)
ロビン・オルセン(28)
イヴァン・マルカノ(31)
明らかな成功例は皆無といっていい。そもそも主力級になることを見込んで獲得した選手が少ないという事情はあるが、ステケレンブルフ、オルセンというレギュラー待遇の二人は本領を発揮できず、あわよくばレギュラーに…という程度には期待されていたドゥンビア、モレノ、マルカノあたりも短期間でチームを去った。反対に、初めからバックアッパーでいいと思われたホレバスはレギュラーになり、ヴァンクールは良くも悪くも期待通りだった。
【パターン8】南米の若手
[信頼度:A]
エリク・ラメラ(19)
ニコラス・ロペス(18)
マルキーニョス(18)
イヴァン・ピリス(23)
ドドー(20)
ラファエウ・トロイ(23)
レアンドロ・パレデス(20)
エメルソン・パルミエリ(21)
ジェルソン(19)
アリソン(23)
ダニエウ・フザート(21)
マティアス・ビニャ(23)
ローマの十八番で、若手の発掘という意味合いでは成功率が高い。ラメラ、マルキーニョス、パレデス、エメルソン、アリソンの売却で、1億6600万ユーロを手にしている。18歳でローマに加入したニコ・ロペスやメンデス、ポンセなど、芽が出なかった事例も少なくないが、アタリを引いたときのインパクトは相当強い。アタランタを経由したイバニェスも同じカテゴライズにすれば、信頼度がさらに増すだろう。
今季加入したビニャには、どのような未来が訪れるだろうか。レフトバックのライバルが怪我で不在なのは、13-14のドドー、16-17のエメルソンと同じシチュエーションだ。
※年齢はすべて獲得当時のもの。
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