チームの低迷と戦力の変動 ~ローマの迷走は続いてしまうのか~
- おしょう
- 2019年4月14日
- 読了時間: 6分
今シーズンのセリエAも残り6試合となったが、ローマは近年経験していないCL出場権争いに巻き込まれている。いまだに4位を狙える位置にいるのは不幸中の幸いだが、仮に来季のCL出場権を獲得したとしても、「今季が良いシーズンであった」と締めくくることには無理があるだろう。
わずか1~2年前と比較してチームメンバーが小粒になった印象は否めず、相変わらずだが主力放出の噂も絶えない。このまま数年間の低迷が始まるのではないかという声も、SNS上でいくらか目にした。
ここでは、強豪がスランプに陥る例として①ローマ(2010~2013年頃)、②ミラン(2012年頃~)、③インテル(2011年頃~)という3つの判断材料を用いて、今後のローマを展望する。
1. タレント力の不足
1年前のローマにはアリソンとナインゴランという2人のワールドクラスがいたが、彼らに代わるタレントは加入していない。もう1年前のリュディガーやサラーのことを考えても同様だ。加えて、昨季まで重要な戦力であったジェコとファシオが不調に陥っている。代役候補のシックやフアン・ジェズスは選択肢の一つだが、ポジションの確保には至らない。
停滞が始まった頃のミランに似ている。チアゴ・シウバとイブラヒモビッチという世界屈指の選手たちを失い、その補填ができなかった。高いポテンシャルを感じさせたエル・シャーラウィやバロテッリ、デ・シーリオの育成も思うように進まなかった。ローマはザニオーロやウンデル、クライファートを上手に育てなければ、小粒な集団になりかねない。
2010-2011以降のローマもトッティとデ・ロッシ以外のタレントを欠いていたが、フロレンツィやピャニッチを育て上げたことが、その後の復活につながった。マルキーニョスやラメラのように、高額で売却するのも一つの手段といえるだろう。チアゴ・シウバとイブラヒモビッチ以降、ミランは売却すらも成功していない。
2. マンネリ化と唐突な改革
インテルの躓きは、ベテランのパフォーマンス低下に対する策不足に起因する部分が大きい。かつてチームを三冠に導いたミリートやカンビアッソ、サムエル、ルシオ、ジュリオ・セザルをしばらくチームに引き留め、結果的には無償で退団させた。さらに、クラブの象徴だったサネッティは別にしても、スタンコビッチとキヴはインテルで引退した。マイコン、スナイデル、パンデフの移籍には移籍金が発生したが、いずれにしても1000万ユーロを下回る低額だった。移籍による金銭的な利益をもたらしたのは、三冠達成時の主力メンバーの中ではエトーだけだ。ほぼ全員が若手ではないとはいえ、手放すタイミングを徐々に失っていったといえるだろう。
インテルほどではないにせよ、およそ同時期にローマも強いチームだった。その直後の2010-2011を考えてみると、ドニ、カセッティ、ピサーロ、メクセス、ペロッタ、タッデイあたりに相変わらず頼ろうとしすぎたと表現しても間違いではなさそうだ。とはいえ、ほとんどが年齢的なピークを過ぎていたため、移籍金で利益を得るのはそもそも困難であった。それでは何がまずかったのかといえば、気づいたときには同タイミングで大部分のポジションに世代交代が求められたことだ。2010-2011の夏に獲得したのは中堅どころばかりで、慌てて大量の若手を連れてきたのは翌年だ。ラメラ、ボージャン、ボリーニ、ピャニッチ、ケアーをまとめて獲得した。近年のパレデスやリュディガー、ロレンツォ・ペッレグリーニ、ウンデルを見ても分かるが、大半のプレーヤーには最低半年の準備期間を要すると思っておくべきだ。
要するに、頼れるベテラン戦士たちが力を発揮しにくくなったタイミングで、どれだけ準備ができているかということだ。そのためなら、そのうちの数名を資金に還元しておいた方がいい。
3. 現在のローマにあてはめてみる(まずはネガティブに考える)
ここからが本題だが、今とこれからのローマは大丈夫だろうか。まずはタレント不足の件だが、残念ながら現状でそれを否定するのは難しい。ロマニスタは選手個々の能力をそれぞれ別種に感じることができるかもしれない。しかし、普段ローマの試合を観ていない者にとっては、クリスタンテとペッレグリーニの違いがあまり分からないかもしれないし、フロレンツィのプレースタイルを知らないかもしれない。要するに、飛び抜けたスキルをもつ存在が少ない。
これは個人的な意見だが、(4バックの場合)中盤以降の6人のうち、4~5人は何かしらのテクニックに特化したスペシャリストであるべきだ。そうでないならデ・ロッシやナインゴランのような能力の平均値が非常に高い万能タイプであればいいが、これといったスキルに長けていない、いわゆる脇役に徹するのは1人か2人で構わない(ここではボールを持たないときのプレーを「スキル」と表現しないこととする)。ペッレグリーニのラストパスやエル・シャーラウィのシュートが優れたスキルであることをロマニスタは知っているが、はっきり言って、それだけでは足りない。スクデットやCLベスト4を「あわよくば」程度でも口にできる戦力ではない。
次は戦力をいかに変化させるかという点だが、こちらも上手くいっていない。今季のローマは「ベテランに期待しすぎた」と「若手に期待しすぎた」を合わせたような状況にある。ファシオとジェコに代表されるような、昨季からパフォーマンスを落としたベテランもいれば、悪くはないが思っていたほど伸びていない、ウンデルやペッレグリーニといった若手もいる。
4. 現在のローマにあてはめてみる(やっぱりポジティブに考える)
以前のローマ、ミラン、インテルとは異なる点もある。ポジティブな部分に目を向けよう。論点は、来夏にチームの再編成を迫られたとき、その準備が整っているかということだ。今季の開幕前に、ローマは過去2年間にアリソン、ナインゴラン、ストロートマン、サラー、リュディガー、パレデスの売却で膨大な資金を手に入れている。毎年のように主力の放出が実行されるのは辛い事実ではあるが、それすらもできないことがあった過去のミランやインテルとは状況が違う。2010年以降でインテルが2500万ユーロ以上で売却したのはバロテッリ、エトー、コバチッチの3人。ミランにいたってはチアゴ・シウバとボヌッチだけで、後者に関しては購入金額の方が高いうえに1年しか在籍していない。ローマには10人いる。話を戻すが、売却益の一部でクライファート、クリスタンテ、ザニオーロ、シック、ウンデル、ペッレグリーニ、カルスドルプをチームの一員にした。さあ新しいチームを築いていこうとなった際に、既に上記の選手たちがウォームアップを済ませているのは大きい。得体の知れない有望株でいるより、よっぽどいい。
5. まとめ
せめて長期の凋落にならないための土台はあると思う。高く売ろうと思えば売れる人がいる、というのは良いことだ。状況としては、11-12や12-13あたりのローマに似ている。若手を育てながら、苦しみながらも戦っていく様子が当時のローマを彷彿とさせる。補強ポイントが多すぎて来季の大躍進というのは今のところ望み薄で、13-14のような大成功の補強がない限りは難しいだろうが…。来季以降の新プロジェクトがどう進むのか、とても楽しみだ。
Comentarios