~垣間見えた復調の兆し~ 第24節レッチェ戦 マッチ分析
- しゅー
- 2020年2月25日
- 読了時間: 9分
⚠️この記事は私の個人ブログ「Directions〜サッカー戦術分析〜」の転載となります。ご了承ください。
花粉症が酷すぎて、涙目でキーボードを叩いております。
どうも、しゅーです
とうとう引っ越しの日まで1ヶ月を切ってしまいました。
ツイッターのプロフィールにも書いてある通り、3月半ばに横浜での一人暮らしが始まります。新生活に想いを馳せる僕ですが、僕の目に映るのは「新型ウイルス」の文字ばかり。そりゃそうです。国の危機ですものね。
しかしそれがどうやら神奈川でも感染が拡大してしまっているようで、なんとも不安な引越し直前を過ごしているというわけでございます。
現在の僕は家にこもりっきりなのでウイルスも困っていることでしょう。
というわけで(?)今回は、第24節レッチェ戦のマッチ分析をしていきたいと思います。
それでは本日のスターティングメンバーから見ていきましょう。
StartingMenber

前節アタランタ戦では4-1-4-1を採用したローマでしたが、直近のヘント戦から4-2-3-1にフォーメーションを戻し今節も同じフォーメーションで臨みました。ヘント戦からは4人の選手を入れ替え、試合中の交代カードの切り方もミッドウィークのELヘント戦を意識しているようでした。
対するレッチェは4-3-2-1。3人のMFが中央を固めた、守備的にも見えるフォーメションで臨みました。
それでは試合を細かく見ていきます。
改善された4バックへのプレス

この画像はサッスオーロ・アタランタ戦でのローマのプレッシングを表しています。
フォンセカ監督は相手の最終ラインに対して一人ずつ前線の選手をはめていくマンツーマン守備を志向しており、3バックに対しては3トップ、4バックに対しては3トップ+OH(ロッロ)で前プレスを行っていました。今季のセリエAでは3バックのチームが多く(個人的なイメージです)その時の3トップでのプレスは確かにハマっていました。しかし、相手が4バックになると状況は一変。画像のようなシーンが多く見られるようになり、崩され失点してしまうこともしばしば。プレッシングの仕方を考え直さないと絶対に勝てないと思っていました。
そして迎えたレッチェ戦。このチームは4バックです。フォンセカローマはどのようなプレッシングをしたのでしょう。

変化は試合開始の直後に現れていました。
敵CBがボールを持った時、まずCFであるジェコがプレッシング。いつもならここでもう片方のCBにはロッロがついていくところでしたが、ロッロはステイ。DHの目の前で立ち止まり、CB-DHのパスコースを塞ぎました。ボールが逆サイドへ流れると今度はロッロがCBへ。そしてジェコは後ろに下がりDHへ。このような縦関係を保ちながらのプレッシングで課題だった4バックへのプレスを解決しました。そしてこの時逆サイドのWGはSBへのマークを捨てCHへ。ボールサイドのCHはボランチの一角がマーキングをし、もう一人のボランチは中央で掃除役(潰し役)としての役割を与えられていました。
ジェコが逆サイドのCBへのパスコースを切りながらプレスをかけることで、1人で2人を抑える状況を作り出し、逆サイドのSBのマークを捨てることで中央を厚くするこの「4-4-1-1」の守備戦術。これによりピッチの中央で数的優位を作り出し、レッチェのビルドアップを機能不全に陥らせました。
ヴェレトゥのSB化による攻守の安定

「ヴェレトゥのポジションが変だ」そう思った方は多いと思います。
ディアワラの離脱後、ビルドアップ時にはクリスタンテの「サリーダ」の動き(CB間に落ちる動き)によって3バックを形成し両SBの攻撃参加を促していました。しかしそれはディアワラ離脱による守備の崩壊を露呈する結果を招いて
そこでフォンセカ監督はヴェレトゥに右に目一杯開くことを要求。偽の右SBとしての役割(シティの『偽SB』とは違うものです)を担います。(リアルタイムで観た時は3バック化かと思いましたが、コラロフの位置を見て「ヴェレトゥは右SB化」したと判断しました。それもこの後解説します)。それによって右SBブルーノに高い位置をとらせ右での攻撃を活性化させました。
ヴェレトゥが右に流れることで何が起こるのか。それを説明していきます。
ヴェレトゥのマッチアップはOH(8番)です。8番はヴェレトゥにプレスをかけます。そうするともともと8番がいたスペースが空き、前線へのパスコースが作られるのです。
しかし、ここで8番かヴェレトゥについていかないとなると、ヴェレトゥは完全フリーになるためいくらでもボールを運べてしまいます。
ヴェレトゥが少しポジショニングを変えただけで、敵は圧倒的に不利な状況を作られてしまう。これを「位置的優位」と言い、現代サッカーのトレンドである「ポジショナルプレー」における重要な要素です。この8番は「プレスをかけてもやられる、かけなくてもやられる」という状況に陥っておりこれを「不可避の2択」なんてかっこいい言い方をすることもあります。「不可避の2択」です。大事なので2回言いました。テストに出ます。
さらに前線ではウンデルがハーフスペース(ピッチを縦に5分割した時のサイドから2番目の部分)に位置し敵CHを釘付けに。オーバーラップをしてきたブルーノには敵SBが対応します。
この時、このSBが「不可避の2択」に陥ってることが分かりますでしょうか。自分がブルーノにプレスをかけなければ、ズカズカと押し込まれてしまう。しかし、かけてしまえば裏のスペースが空き、ウンデルやらジェコやらに走りこまれてしまう。こうなった時点でこの試合は支配できたも同然です。
フォンセカ監督が志向する「ポゼッションサッカー」。ボールを支配していれば点は取られないという考え方。それはこのようにポジショニングを少し工夫するだけで体現することができるのです。
とは言ってもボール支配率100%なんてことは絶対にありえません。
レッチェのビルドアップは先述したように妨害することができましたが、ローマの最大のウィークポイントとも言える「被カウンター」の部分はどうだったのでしょうか。

画像は11:50のシーンです。バイタルエリアでボールを奪ったレッチェはすぐさまカウンターへ移行。CFの9番がボールを受け8番にボールを渡しました。するとこの時、左SBのコラロフと偽の右SBであるヴェレトゥはすぐさま中央へ。ボールの付近に位置するレッチェ攻撃陣3人を囲い込みボール奪取。ここからのカウンター返しで先制点をもぎ取りました。これはヴェレトゥとコラロフがサイドから中央に入ってくることによって作られる包囲網であり、これもヴェレトゥSB化の恩恵の一つです。
このSBが絞っていく動きはアタランタ戦の記事で僕が改善点としてあげた「アンカー脇の対応」に密接な関係があり、このシーンだけでなく、他のシーンでも改善が見られました。
また、アタランタ戦で起きていた「ジェコの孤立」という問題。これも、ヴェレトゥのSB化によって解決しました。ビルドアップ時にも説明しましたが、ヴェレトゥSB化で中央のパスコースが空きます。今まではパスコースがなかったために前線から落ちてくる選手が多くなり、結局前線にはジェコしかいないという状況が生まれていました。しかしパスコースができたことで前線の選手は相手のDF-MF間で待っていてもパスが来るため不用意に落ちてくることはありませんでした。逆にジェコが落ちてくる「偽9番」の動きをすることで、ジェコの散らしの上手さや体の強さが生きていました。
視野が広く後方からパスを出せる。そして守備ではピッチをひたすら走り回ることができる。このヴェレトゥの特徴を生かした「ヴェレトゥのSB化」。これがローマ復調の鍵になっていくのではないかと思います。
『5人で攻めて、5人で守る』
見出しの通りです。今までは、クリスタンテのサリーダ→両SB上げによって「CB2人+クリスタンテ+一列前にいるヴェレトゥ」の4人で守っていました。フォンセカ監督は4人では守りきれないと判断。ヴェレトゥをSB化します。先程、「3バックかと思ったら4バックだった」という風に書いたと思います。見ていた皆さんも3バック化だと思っている方は多いと思いますので解説させて頂きます。

この画像は、「WhoScored」というサイトに掲載されている1試合を通してのヒートマップです。左の欄を見ていただければわかるようにこれは、マンチーニ、スモーリング、コラロフ、ヴェレトゥ、クリスタンテの5人のヒートマップです。先述したように僕も初めはコラロフも高い位置をとって後ろは3バックになっていると思ったのですが、このヒートマップをみると意外とそうでもありません。比較としてそれ以外の5人のヒートマップを載せておきます。

これを見るとわかる通り、右サイドのブルーノはかなり高い位置を取り続けており、それを踏まえて試合を見返すとコラロフが常にピッチを見渡し、バランスを取っているのが分かります。
つまり、「5人で攻め、5人で守る」ということになります。
これに関してもアタランタ戦の記事で「攻守のバランス」という言葉で改善点としてあげました。さらにこれは「チャレンジアンドカバー」の話にもつながっているような気がします。
これが監督の指示なのかコラロフの判断なのかは分かりませんが、攻守のバランスが良くなった事が久方ぶりのクリーンシートにも繋がったのではないでしょうか。
今回のマッチ分析は以上となります。
今回の記事では色を使ったり下線を使ったりしたらうまいことまとまって見えたので「まとめ」の部分は省きました。
いや~いい試合でしたね。相手がレッチェだからと言われればそれまでなんでしょうが、これを続けていけばまだまだCLも射程圏内でしょう。僕はそう思います。
この試合ではツイキャスで生配信をする気はあまりなく準備もしてなかったのですが、あまりに(戦術的に)面白い試合だったのでつい後半から始めてしまいました。
その配信の中で僕は「リヴァプールみたい」と何度も言っていたと思います。本当にそうなんですよ。リヴァプールみたいだったんですよこのローマは。攻撃参加が特徴の両SBがいて、SB裏に落ちてさらによく走れるMFがいて、中盤に降りてきてビルドアップに参加するCFがいて、最終ラインには個で圧倒できるポニーテールのCBがいてっていう感じで。プレミアで負けなしのチームのプレーを完コピできたらそりゃ強いです。とは言ってもローマはリヴァプールではなく、ローマがやっているサッカーは紛れもなくオリジナルの「ローマのサッカー」だということは言っておきます。
キャスの中では、ウンデルとカルレスの違いだったりをドヤ顔で解説していたのですが、それはまた別の機会に文字にしたいと思います(多分)。
ツイキャスに関しては、僕の身の回りの準備が整い次第でコラボキャスなんかも予定しているので、その時はよろしくお願いいたします。
最後に今日の記事の中で度々紹介した、アタランタ戦記事の中の「改善点」部分のスクショを貼っておきます。暇だったら見てください。

では、Ci Sentiamo!!
Commentaires